【LIFESPAN (ライフスパン): 老いなき世界】

インフォメーション
題名 | LIFESPAN (ライフスパン): 老いなき世界 |
著者 | デビッド・A・シンクレア |
出版社 | 東洋経済新報社 |
出版日 | 2020年9月 |
価格 | 2,640 円(税込) |
【人類が迎える衝撃の未来!】
人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。
だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。
私たちは不自由な体を抱え、さまざまな病気に苦しめられながら晩年を過ごし、死んでいく。
だが、もし若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか?
いくつになっても、若い体や心のままで生きることができて、刻々と過ぎる時間を気に病まずに、何度でも再挑戦できるとしたら、あなたの人生はどう変わるだろうか?
ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、そのような世界がすぐそこまで迫っていることを示す。
本書で著者は、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。
私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。
老化遺伝子が存在しないように、老化は避けて通れないと定めた生物学の法則など存在しないのだ。
生活習慣を変えることで長寿遺伝子を働かせたり、長寿効果をもたらす薬を摂取することで老化を遅らせ、さらには山中伸弥教授が突き止めた老化のリセット・スイッチを利用して、若返ることさえも可能となるだろう。
では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?
著者によれば、寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても、科学技術の発達によって、人類は地球環境を破壊せずに、さらなる発展を目指すことができるという。
いつまでも若く健康で生きられれば、年齢という壁は消えてなくなる。
孫の孫にも会える時代となれば、私たちは次の世代により責任を感じることになる。
変えられない未来などない。
私たちは今、革命(レボリューション)の幕開けだけでなく、人類の新たな進化(エボリューション)の始まりを目撃しようとしているのだ。
引用:Amazon
ポイント
- 老化の原因は何で、どうすればそれを食い止めるかについて、研究者の間で意見が一致している。今後、老化を治療するのは、少なくともガンを治癒させるよりはるかに簡単になるであろう。
- 生命はどんなに厳しい環境でも自らの遺伝物質を守り、数億年にわたって途切れることなく繁殖を続けてきた。その仕組みを理解する上でカギを握るのがサーチュイン遺伝子なのである
- 長く健康を保ち、長寿を最大限に伸ばしたいなら、「食事の量や回数を減らす」ことが確実で、今すぐ実行できる方法である。
サマリー
老化の原因に注目すべき理由
年を取る理由を考えたことがあるだろうか。
何とか老化を遅らせることはできないかと、様々な方法を探すだけであろう。
たとえば1960年代まで、なぜガンが発生するのかを語る統合理論がなかったため、ガンの治療は症状を抑えるだけのものだった。
ところが1970年代に入ってから変異を起こすとガンになる「ガン遺伝子」が発見され、現在ではすべての種類のガン
を治療できるわけではないが、ガンの治癒は不可能ではなくなったのである。
現在の老化研究は、1960年代のがん研究と似たような段階にある。
老化がどのようなもので、私たちにどんな影響を与えるのか。
そして、老化の原因は何で、どうすればそれを食い止めるかについても、研究者の間で意見が一致しているのである。
今後、老化を治療するのは、少なくともガンを治癒させるよりはるかに簡単になるであろう。
生殖とDNA修復を調整しているサーチュイン
著者が主な研究対象にしているのが、長寿遺伝子「サーチュイン(sirruin)」と呼ばれるものである。
哺乳類では全部で7種類のサーチュイン遺伝子が見つかっており、これらは体内のほぼ全ての細胞でタンパク質を作っている。
サーチュイン遺伝子は、環境や生活習慣の影響で遺伝子のスイッチが「オン」や「オフ」になるような調節機能において重要な役割を担っており、私たちの生殖とDNAの修復を調整している。
だが、加齢と共にそのDNAが失われ、同時にサーチュインの働きが衰えてしまうことから、老化特有の病気を発症すると考えられているのだ。
生命はどんなに厳しい環境でも自らの遺伝物質を守り、数億年にわたって途切れることなく繁殖を続けてきた。
その仕組みを理解する上でカギを握るのがサーチュイン遺伝子なのである
健康長寿のために誰もが取り組めること
本書で取り上げる治療法や寿命を延ばすテクノロジーの中には、すでに利用できるものもあれば、数年先に実用化されるものもある。
しかし、開発中の技術を待たなくても、自分の長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法があるのだ。
◆食べる量を減らす
長く健康を保ち、長寿を最大限に伸ばしたいなら、「食事の量や回数を減らす」ことが確実で、今すぐ実行できる方法だ。
100歳以上の長寿が多い地域、日本の沖縄やコスタリカのニコヤ半島などには共通する食習慣があり、それを「長寿食」と呼ぶ。
簡単に言えば、野菜や豆腐や全粒の穀物を多く取り、肉や乳製品や砂糖を控えるのである。
さらにもうひとつは「間欠的断食」といい、食事を抜く期間を周期的に差し挟むという健康増進方法だ。
絶えず空腹でいるわけではなく、一定の時間だけ体を飢えさせることでサバイバル回路を始動させ、これによって長く健康な生涯をもたらすのである。
◆アミノ酸を制限する
アミノ酸は有機化合物で人体のあらゆるタンパク質を組み立てる材料であり、アミノ酸がなければ細胞は酵素を生成することができない。
そしてこの酵素こそが生命活動の源なのである。
肉類には9つの必須アミノ酸がすべて含まれており手軽なエネルギー源ではあるが、この肉自体が相当危険な代償を伴う。
動物性たんぱく質に偏った食生活を送っていると、心血管系疾患による死亡率とガンの発生率がともに高まり、加工した赤身肉、特にソーセージ、ハム、ベーコンなどは恐ろしく発がん性が高いのだ。
◆理想の運動強度はどれくらいか
1日5分〜10分程度のランニングをするだけでも、走る習慣のない人より数年長生きできるが、長寿遺伝子の力を最大限に発揮させるには強度が大切になる。
そして、健康を増進する遺伝子を1番多く活性化したのは、「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」であった。
これを行うと心拍数や呼吸数が著しく上昇し、一息つかないと話せないほどの状態になる。
これは「低酸素応答」と呼ばれるもので、この状態が体に適度なストレスを与え、老化に対する体の防衛反応を活性化させてくれる。
なぜ運動が体にいいのかというと、運動によって数々の長寿遺伝子がプラスの方向に調整され、遺伝子がスイッチを入れて、私たちを細胞レベルで若返らせてくれるのである。
◆寒さに身をさらして長寿遺伝子を働かせる