読むのにかかる時間 約 6 分
インフォメーション
題名 | 今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「経営学」 |
著者 | 佐藤 耕紀 |
出版社 | 同文館出版 |
出版日 | 2021年6月24日 |
価格 | 1,870円(税込) |
ポイント
- 経営学の基本は「費用対効果」(効率、生産性)という考え方だ。これを理解して実践すれば、短い時間で多くのことをこなして、自由に好きなことができる人生に近づくことができる。
- 経営は確率のマネジメントである。成功の可能性を高くすることに注力し、「概ね良好」でいいのである。
サマリー
はじめに
本書を書くにあたり、最初に考えたのはどういう性格の本にするかということだ。
著者は、かねてから、経営学の文章はともすれば難解で、実際に何の役に立つのか分かりにくい面があると思っていた。
一方、実務家やコンサルタントの解説は、ときとして論理性や根拠に乏しいとも感じていた。
そこで、科学的な理論に裏打ちされつつも、「わかりやすい」「役に立つ」にこだわった本をつくりたいと考えた。
まさに、読者にとって、コストパフォーマンス(費用対効果)のよい本をつくろうと思ったのだ。
経営学の基本は「費用対効果」(効率、生産性)という考え方だ。
これを理解して実践すれば、短い時間で多くのことをこなして、「お金」や「時間」や「知識」を得られ、自由に好きなことができる人生に近づけるのである。
もう少し具体的にいえば、経営学を学ぶことで、
「要領よく仕事をする」(1章)
「賢い判断をする」(2章)
「売上や利益を増やす」(3章)
「小さな費用で大きな成果をあげる」(4章)
「ライバルとの競争に勝つ」(5章)
「組織の仕組みを理解する」(6章)
「やる気を活かす」(7章)
「マネジメントの仕組みを理解する」(8章)
「自分の価値を活かす」(9章)
「豊かな人生を切り拓く」(10章)
「生産性の高い働き方をする」(11章)
といったことのヒントが見つかるはずだ。
ビジネスで費用と効果を金額で表す
何をするにしても得られるものと失うもの、プラス面とマイナス面がある。
プラス面は活動から得られる「効果」、マイナス面はその「費用」(活動のために消費した資源)だ。
企業会計では、ある時点の「資産」や「負債」の状態を金額で表す「賃借対照表」、一定期間の収益や費用の状況を金額で表す「損益計算書」といった「財務諸表」を作成する。
資産から負債を引いた純粋な資産のことを「純資産」というが、企業の「純資産」とは、ダムに溜まった水のようなものである。
上流から流れ込む水が「収益」、下流へ流れ出る水が「費用」にあたる。
流入の方が多い時(純利益)、その分だけダムの水(純資産)が増える。
流出の方が多い時(純損失)、その分だけダムの水(純資産)が減る。
純損失(赤字)が続いてダムの水が底をつくと「債務超過」に陥り、倒産の危機にさらされるのだ。
費用対効果の実際
たとえば、1人でラーメン店を経営しているとする。
ビジネスでいえば「効果」は売上などの収益、「費用」はそのためにつかったお金だ。
年間の収益(売上)が1000万円、費用が950万円だとしよう。
費用対効果(効率)を計算するには、効果を費用で割り算するので、このお店の経営効率(費用対効果)は、「(収益1000万円)÷(費用950万円)」で、約1.05という数字で表される。
効果も費用も同じ測定単位(この場合は金額)で表されるときは、この数字が1より大きいかどうかが問題になる。
このラーメン店は、社会の貴重な資源をつかって、その約1.05倍の価値を生み出したことになり、この数字が大きいほど効率的な経営で、社会に貢献することになるのだ。
複数の選択肢があるときは、費用対効果の大きいものから優先して実施するという考え方は、「費用便益分析」と呼ばれ、実際に公共事業などでつかわれている。
少子高齢化に向き合い、生産性を高める「働き方改革」
日本の働き方の問題のひとつは、長時間労働だ。
長時間労働は少子化につながり、少子高齢化は財政の悪化を招く。
さまざまな国の生活水準は、基本的には「労働生産性」で決まる。
生産性とは、1人が1時間で生産する商品やサービスの量であり、時間あたりの生産性が高い国ほど、生活水準も高くなる。
OECD(経済協力開発機構)に加盟する36ヵ国のうち、日本の労働生産性は21位とかなり低い。(2019年時点の調査)
生産性とは費用対効果なので、日本は「効果のないところに費用をかけている」「無駄なところに時間やエネルギーを割いている」といえる。
また、日本では「雇用の流動性」が低いことも、生産性が低い理由の1つかもしれない。
雇用の流動性を高めるというと、多くの人は「クビをきられやすくなる」と拒否反応を示すが、新しい仕事を見つけやすくなるというメリットもあるのだ。
さらに、多くの先進国では分業、専門化のメリットが活かされ、従業員は自分の好きな仕事、得意な仕事に集中する。
しかし、日本の組織ではよく、時給の高い職員が専門外の仕事に時間を取られている。
このような現状を改善すべく「働き方改革」が進められているが、制度というよりは、これまでの長い歴史の中で築かれた日本人の文化や常識、感覚の問題にも思える。
著者としては、制度ではなく、「実態」がどう変わるのかに注目している。
燃え尽きず、自分らしく生きるために
経営というのは(人生もまた)確率のマネジメントだ。
必ずうまくやるというのは不可能で、成功の可能性を高くすることしかできないのだ。
完璧でなく、概ね良好でいいのである。
また、分業、専門化の進んだ社会では、1つのことだけでも突出して優れている人が高い価値を持つ。
自分の強みを活かして、社会に貢献できる得意分野は誰にでも必ずあるのだ。
どんな時代でも、誰にとっても、人生は波乱万丈で行き詰ることもある。
しかし、行き詰っても歩き続ければ、いつかトンネルを抜けられる。
明けない夜はないのだ。
From Summary ONLINE
著者は防衛大学で長期に渡り経営学を教えており、戦争史に学ぶ経営学のような事例も複数掲載されていることから、イメージし腹おちさせながら読み進めることができます。
また、各テーマが2ページずつ書かれており、年齢問わず読みたい内容から読み進めることができ、これから経営学を学んでいきたいという方でも楽しく理解しやすい構成になっています。