【「身体を売る彼女たち」の事情ー自立と依存の性風俗】

インフォメーション
題名 | 「身体を売る彼女たち」の事情ー自立と依存の性風俗 |
著者 | 坂爪 真吾 |
出版社 | 筑摩書房 |
出版日 | 2018年10月 |
価格 | 968円(税込) |
なぜ彼女たちはデリヘルやJKリフレで働くのか? そこまでお金が必要なのか? 一度入ると抜け出しにくいグレーな業界の生の声を集め、構造を解き明かす!
引用:筑摩書房
ポイント
- 本書を読み進めていくうちに、あなたは、JKビジネスや性風俗の世界で働く彼女たちが売っているのは、決して『身体』ではないことに気づくだろう。そして、これらの世界に山積になっている課題が『彼女たちの』という三人称で語られるべき『他人事』ではなく、『私たちの』という一人称で語られるべき 『自分事』であることにも気づくだろう。
- 著者は、風(ふう)テラスという、風俗ではたらく人のための無料生活・法律相談サービスの場をつくり、適切な支援の方法や実効性のある政策の在り方を試行錯誤しながら模索しているのだ。
- 「『身体を売る彼女たち』の事情とは何か。それは、いびつな共助の中で生きていかざるをえない私たち自身の事情に他ならない」
サマリー
性風俗と社会をつないだ「後」に見えてきた景色
著者は、前作『性風俗のいびつな現場』(2016年出版)で、グレーな性風俗のカラクリを解き明かしたうえで、司法と福祉を媒介にして「性風俗と社会をつなぐ」というビジョンを提示している。
生活に困窮した女性の集まる性風俗店と司法・福祉が連携すれば、これまでの行政やNPOでは決してリーチできなかった層の女性に適切な支援を届けられる可能性を提示し、そこにこそ「性風俗の正義」=社会的存在意義があると訴え続けてきたのだ。
そして二年間にわたり全国各地で、司法と福祉を媒介にして性風俗と社会をつなぐ試みを実践したという。
今作では、そうした実践の中から見えてきたミクロの世界=性風俗で働く彼女たちが抱えている課題を整理しながら、それらを生み出すマクロな社会構造を解き明かすことを目的としている。
著者は綴る。
「本書を読み進めていくうちに、あなたは、JKビジネスや性風俗の世界で働く彼女たちが売っているのは、決して『身体』ではないことに気づくだろう。そして、これらの世界に山積になっている課題が『彼女たちの』という三人称で語られるべき『他人事』ではなく、『私たちの』という一人称で語られるべき 『自分事』であることにも気づくだろう。『彼女たちの問題』を『私たちの問題』として捉え直すことのできるリテラシ―は、複雑性と不透明性が増していくこれからの社会を生きる全ての人にとって、必要不可欠な武器になると信じている」
JKリフレという駆け引きの世界
2017年7月1日、東京都において「特定異性接客営業等の規制に関する条例」いわゆるJKビジネス規制条例が施行され、こうした業態で18歳未満の青少年に接客されることが禁止された。
しかし、その後、JKに近い年齢の女性がJKのような服装をして接客する「JK風ビジネス」が主流となり、18歳未満の未成年が紛れ込んだり、巻き込まれる危険性も消えないまま現在に至っているという。
著者は、東京・池袋にある派遣型リフレ「JKMAX」の事務所を訪れた。
女子高生に最も近い10代少女のみが在籍していることを売りにしている。
派遣型であるために店舗字体が存在せず、女の子の出勤状況等は主にツイッター上で発信され、店と女性との間とのやり取りはすべてLINEだという。
そして、最大の特徴は「サービス内容(オプション)とその料金は、全て女性自身が決める」という点だ。
派遣型リフレは、性風俗における流れ作業のようなサービスを嫌がる男性客、自分のしたくないサービスはやらずに済ませたい女性、そして、店舗の運営や広告宣伝にかかる経費を抑えて利益を出したい経営者。
この三者のニーズが合致し、生まれるべくして生まれた存在であると説明する。
著者は、派遣型リフレの世界に集まる少女たちが、どのような課題を抱えているのか、そしてそれらを解決するするためには、どのようなアプローチが必要なのかを知るために、実際に「JKMAX」で働いている女の子たちにインタビューすることを試みた。
その一次情報をもとに本書は書かれている。
立ちはだかる二十歳の壁
著者は、派遣型リフレの3つのリスクを挙げる。
1つ目は、接客に伴う身体的なリスク。
2つ目は、メンタル面のリスク。
そして、3つ目は「二十歳の壁」というリスクだ。
リフレでの破格の売上を手にできるのは二十歳前後であるということは、現場で働く女性たち自身が誰よりも自覚しているという。
しかし、その二十歳前後で金銭感覚が狂ったまま、そのままずるずる性風俗の世界に流れ込んでしまう人もいる。
世間一般では、「JKビジネスで被害に遭っている女の子を助けたい」と考える個人や支援団体、そして、10代の少女は性的な存在であるべきではないと考える年長世代も多い。
しかし、著者が実際にインタビューしたリフレで働く女性は、一定数が、自らの意思で参入し、自らの性を商品化して荒稼ぎをしていると指摘。
だからこそ、著者は、こういった3つのリスクに直面した時や直面する前に、リフレで働いていることを隠さずに相談できる窓口の必要性を感じている。
そこで著者は、風(ふう)テラスという、風俗ではたらく人のための無料生活・法律相談サービスの場をつくり、適切な支援の方法や実効性のある政策の在り方を試行錯誤しながら模索しているのだ。
身体を売る彼女たちの事情
本書では、リフレという入り口からデリバリーヘルス、そして風俗嬢になっていく個人的な理由、そしてその背景にある社会的な理由は何なのかを深く洞察し問題提起していく。
著者は、性風俗には1つの法則があるという。