【地頭力を鍛える】

インフォメーション
題名 | 地頭力を鍛える |
著者 | 細谷 功 |
出版社 | 東洋経済新報社 |
出版日 | 2007年12月 |
価格 | 1,980円(税込) |
本当の頭のよさ、「地頭(ジアタマ)力」とは何か。面接試験問題の定番である「フェルミ推定」をツールに、「結論」から、「全体」から、「単純」に考える思考力を鍛えよう。
引用:東洋経済新報社
ポイント
- 著者は、今こそ「地頭力」を鍛えて、インターネットで得られる膨大な情報を駆使して力を発揮することの重要性を訴えている。
- 本書では、地頭力を鍛えるための強力なツールとして「フェルミ推定」が紹介されている。「原子力の父」といわれるノーベル賞物理学者である、エンリコ・フェルミ(1901-1954)の名前からつけられた物理量の推定のことを指す。
- フェルミ推定は、ビジネスの現場でも大いに活用しやすい「地頭力を鍛える」ツールなのだ。
サマリー
「地頭力」とは
「地頭力」と聞くと、生まれつき備わっている力をイメージする人が多いかもしれない。
しかし、本書での「地頭力」とは、「考える力のベースとなる知的能力」であると定義されている。
そして、その「地頭力」は、本書のタイトルの通り「鍛える」ことができるというのだ。
それではなぜ、今「地頭力を鍛える」ことが必要なのだろうか。
著者が何より危惧しているのは、インターネット情報への過度の依存により、人間の「考える能力」が退化していることだ。
インターネットがあれば、世界中のありとあらゆる情報を誰でも簡単に手に入れることができる。
何か知りたいことがあれば、検索すれば知りたい情報をすぐに目にすることができてしまう。
しかし、その情報を「考えることなく」いとも簡単に受け入れてしまうならば、人間の役割はことごとくコンピュータに取って代わられるだけだと指摘している。
だからこそ著者は、今こそ「地頭力」を鍛えて、インターネットで得られる膨大な情報を駆使して力を発揮することの重要性を訴えているのだ。
本書では、「地頭力」とは「考える力」の基礎となるものであり、「結論から」考える力(仮説思考力)、「全体から」考える力(フレームワーク思考力)、「単純に」考える力(抽象化思考力)から構成されると位置づけている。
そして、物事を考えるプロセスと習慣を訓練で身につければ 「地頭力」を鍛えることができると教えているのだ。
インターネットの膨大な情報に溺れてしまうのか、それとも大量な情報を「考える力」によりさらに力を増幅できるのか、この二極化を著者は「ジアタマデバイド」と名付けた。
このジアタマデバイドの時代に必要な「地頭力」の鍛え方が本書で明かされていく。
地頭力を鍛えるツール
本書では、地頭力を鍛えるための強力なツールとして「フェルミ推定」が紹介されている。
「原子力の父」といわれるノーベル賞物理学者である、エンリコ・フェルミ(1901-1954)の名前からつけられた物理量の推定のことを指す。
例えば、「東京都内に信号機は何基あるか?」とか「世界中にサッカーボールはいくつあるか?」など、応えることが難しい数量について、何らかの推定ロジックを使い短時間で概数を求める方法を「フェルミ推定」と呼ぶ。
具体的には、コンサルティング会社や外資系企業での面接試験でフェルミ推定が活用されているようだ。
その目的は、解答のない質問をすることにより、解答者の「考える力」つまり「地頭力」を試すためだという。
インターネットを検索してすぐに答えを出せるようなものではなく、正解にたどり着くのが困難な「問題解決力」が試されるというわけだ。
著者は、フェルミ推定の解答プロセスは問題解決のプロセスの縮図そのものであると指摘する。
本書にある、現状の自分の考え方の癖を知ることができる地頭力のチェックリストや、フェルミ推定の例題に取り組むことは、「3つの思考力」(「結論から」「全体から」「単純に」考える)を鍛えることに有効な手段だ。
フェルミ推定をビジネスに応用するには
本書では、フェルミ推定が必要と思われるビジネスパーソンを6つのタイプに分類し、それぞれの処方箋が具体的に解説されている。
本要約ではそのうち3つを紹介する。
1つ目は「検索エンジン中毒」。
ビジネスパーソンに限らず、多くの人があてはまるタイプではないだろうか。
具体的には、頭が働くより先に手が動いて検索エンジンにキーワードを入力していたり、検索したことをそのまま鵜呑みにしてしまうようなタイプだ。
そのようなタイプへの処方箋は、検索したがる自分自身を「羽交い絞めにして」でも、自分の頭でかんがえるために「仮説を立てる」ことが必要だという。
フェルミ推定は、少ない情報で結果を推定するものなので、自分の頭を使って考える癖をつけるために役立つツールになるだろう。
2つ目は「完璧主義」タイプだ。
具体的には、期限より品質を優先して締め切りをよく遅らせたり、不十分な情報では作業に着手できなかったりする。