【禁忌習俗事典】

インフォメーション
| 題名 | 禁忌習俗事典 |
| 著者 | 柳田 国男 |
| 出版社 | 河出書房新社 |
| 出版日 | 2021年3月 |
| 価格 | 990円(税込) |
「忌む」とはどういう感情か。ここに死穢と差別の根原がある。日本各地からタブーに関する不気味な言葉、恐ろしい言葉、不思議な言葉、奇妙な言葉を集め、解説した読める民俗事典。全集未収録。
引用:河出書房新社
ポイント
- 「イミ」とは、もともと「けがれ(不浄)」を避けるための考え方であり、神事(祭り)などで清らかさを保つために用いられてきた。これは日本だけでなく、世界各地の民族にも見られる「タブー(してはいけないこと)」の一種である。
- 火に負ける(ヒニマケル):家で火を使う際、その勢いが強すぎると、体の弱い人や内気な人が「火の災い」を受けると考えられていた。
- 出入(でっと):神事(祭り)の際、「忌み」の状態にある人(とくに喪中の者)は、祭りの穢れを避けるため、自ら家を出て、知人宅などで過ごすという風習。
サマリー
音声で聴く
はじめに
日本では「イミ(忌み)」という言葉が、いくつかの異なる意味で使われている。
「イミ」とは、もともと「けがれ(不浄)」を避けるための考え方であり、神事(祭り)などで清らかさを保つために用いられてきた。
しかし、同じ「イミ」という言葉でも、 一方では「神に仕える際に身を清める意味」、もう一方では「不吉なものや死を避ける意味」など複数の使い方があり、これらを区別して考える必要がある。
この「忌み」という考え方は、日本だけでなく、世界各地の民族にも見られる「タブー(してはいけないこと)」の一種である。
ただし、「日本の忌み」がどこから生まれたのかを正確に突き止めるのは、古代の記録が少ないため難しく、当時の人々の心の内まではうかがい知ることができない。
そこで著者は、現代の知識や視点をもとに、あらためてこの問題を見直そうとしている。
日本の「忌み」を理解するには、世界の類似した風習や考え方と比較しながら、丁寧に研究を進めることが大切である。
そうすることで、「日本の忌み」が本来もっていた意味が、より明らかになるだろう。
忌みを守る法
山止め(ヤマドメ)
伊豆の御蔵島(伊豆諸島)では、御山の横場(おそらく木材)を伐り出すのは男の仕事であったが、それを運び出すのは女の役割とされていた。
しかし、出産後七十五日間および月経中の女性は、絶対に山に入ることが許されなかった。
この掟を破った者は、罰として銭百文(ぜんひゃくもん)と米一升(こめいっしょう)を神社に納め、清めの祓(はらえ)を受けなければならなかった。
仮屋者(カリヤモノ)
志州答志島(ししゅう・とうじしま)の海女の間では、穢(けが)れのある婦人を「カリヤモン」と呼んでいた。
つまり、穢れの状態にある女性、またはその期間中の者を指す言葉である。
「仮屋(かりや)」という語は三河渥美郡にも見られ、汚れた茶碗を「カリヤ茶碗のようだ」と言う諺(ことわざ)も残っている。
忌みの終わり
忌剣(いみはぎ)
「忌み」の状態にある人(たとえば、身内に不幸があった人など)から、その穢れを取り除くための儀式や習わしのことをいう。
出抜け(でそげ)
「忌み」を負った人が、家族に迷惑をかけぬよう一時的に家を離れること。
方法としては、家の障子の外に立って家族と話したり、家の中に入らず外で過ごしたりする。
出入(でっと)
神事(祭り)の際、「忌み」の状態にある人(とくに喪中の者)は、祭りの穢れを避けるため、自ら家を出て、知人宅などで過ごすという風習。
忌みの害
火に負ける(ヒニマケル)
家で火を使う際、その勢いが強すぎると、体の弱い人や内気な人が「火の災い」を受けると考えられていた。
この害を避けるため、裏の窓から出入りしたり、火を避けるための呪い(まじない)が行われた。
カワキの病(カワキノヤマイ)
食べても食べても満たされない病気、すなわち飢餓感が続く病を指す。
この病の原因は「爪を切り、それを火に投げ入れること」だと信じられていた。
爪を火に投げる行為と「渇きの病」との関係について、昔の人々も頭を悩ませていたようだが、その理由は今となっては不明である。
信州西部では、杓子(しゃくし)で掬(すく)ったご飯、またはその柄で掬ったご飯を食べると、この「カワキの病」が治るとされた。
また、爪を火に入れると「カクの病」、すなわち胃癌や難病になるとも言われ、いずれにしても、爪を火に入れることは昔の人が最も忌んだ行為であった。
