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【終電の神様】

読むのに必要な時間 約 6 分

目次

インフォメーション

題名終電の神様
著者阿川 大樹(アガワタイジュ)
出版社実業之日本社文庫
出版日2017年2月2日
価格652円(税込)

登場人物

第一話 
・わたし
 常田沙代子の夫。女装が趣味

・痴漢の男
 電車内でわたし(・・・)に痴漢する

・常田沙代子
 わたし(・・・)の夫

第二話 
・片山隆
 IT企業「スマッシュ・システムズ」エンジニア。開発プロジェクトリーダー

・社長
 「スマッシュ・システムズ」の代表取締役 42歳

・島田麻里
 開発プロジェクトチームの一員

・相田
 開発プロジェクトチームの一員

・会長
 ボクシングジムの会長

第三話  
・潮田智子
 アナリスト

・進藤哲生
 競輪選手。潮田の彼氏

第四話 
・芝山俊和
 サラリーマン。床屋「芝山」の一人息子

・芝山弘敏
 俊和の父。理容師。床屋「芝山」の店主

・高橋
 隣町の商店街で文房具店を経営。58歳でサラリーマンを早期退職

第五話
・沙也
 29歳。イラストレーター

・ショウ
 高岡祥司。アーティスト。沙也とは大学の同級生

・タツ子
 実名 龍三。芸名「べるさいゆ・タツ子」

第六話
・嵯峨野仁美
 美大を目指す高校生。他の人と合わない感覚

・富田弘道
 嵯峨野の同級生。男子グループ内でパシリ役

・仁美の母
 母子家庭で仁美のよき理解者

・重山
 仁美の高校担任

第七話
・広田喜美子
 駅キヨスク売店販売員。25年勤務

・里子
 喜美子の相棒。キヨスク正社員チームリーダー 

・ナカノ
 キヨスクの常連客。33年前喜美子を救った恩人

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

第一話 化粧ポーチ

帰宅途中、緊急停止した満員電車内で痴漢にあったわたし(・・・)

K駅ホームで降りると、「女にしか興味はない」とわたしは痴漢に反撃した。

妻沙代子のメールに気づかなかったわたし(・・・)は、救急隊員から沙代子の搬送先を告げられた。

尿管結石で入院した沙代子は、化粧のまま病院に駆け付けたわたしに喜んだ。

妻は女装趣味のわたし(・・・)に気づいていた。

医師が来る前にメイクを落とすよう沙代子は化粧ポーチをわたしに渡し、「どれを使うか わかるわね」と言い放つ。

沙代子の寛容さ、懐の広さに思わず驚きだ。

前から気づいていながら見守っていた沙代子に頭が下がる。

夫婦の絆にメデタシメデタシ。

第二話 ブレークポイント

納期日が迫り焦るプロジェクトリーダーの片山隆は、社長に納期変更を頼んだ。

納期遅滞は給料未払いになると社長から聞かされた。

残業続きを危惧する社長は、「明後日、開発部は休日」と命じた。

休日前にブレークポイントを決めるメンバーの表情が明るくなった。

片山は終電を逃した。

帰る途中、ボクシングジムの会長から声をかけられた片山。

「倒れずに立っていれば必ずゴングは鳴る」と会長が諭す言葉に片山の表情は一変した。

部下の島田麻里から「相田からプロポーズされた」のメールが入った。

周囲が見えず余裕がない自分に気づかされた片山だった。

ボクシングジムで見え方が変わった一瞬、明日への希望が持てそうだ。

「サンドバックって、相手にするとそれしか見えなくなる」は、誰にでも当てはまり、ドンピシャ胸のつかいが下りた。

第三話 スポーツばか

身体を鍛え自己コントロールする競輪選手の進藤哲生を尊敬する潮田智子。

幸せなはずの潮田が、わざと「遅れる」と進藤に連絡したのは、今日がいつもと違う日だったから……。

進藤から「降格しそうだ」と聞かされ、休養を促した潮田に、「お前のために競争しているんじゃない」と進藤から突き放される。

寂しさと幸せが壊れる怖さに、別れの手紙を投函した潮田。

その晩、電車の緊急停止で遅れた潮田は、いつもと変わらぬ素振りで進藤と過ごす。

翌日、進藤から「近所の郵便局が火災で郵便物が燃えたらしい――俺もちゃんと傷を治すよ」のメールが入る。

ありのままでいたい反面、現実の受けとめに躊躇する潮田の心境に共感する。

都合で愛し合ったわけではないけど、都合の合わない恋愛は長続きしない――はシビアだ。

どこかチグハグだけど、けなげな感じ。二人の愛が涙ぐましい。

第四話 閉じない(はさみ)

芝山俊和は小料理屋で高橋から、行きつけの床屋が廃業となり、隣町の床屋「芝山」にのりかえたと聞かされた。

主人の腕が良いと高橋が言うと、「父の店です」と告げる俊和。

偶然にも母から「父の容態急変」のメールが届く。

病院へ駆けつけ、父の顔に手を添えた俊和。

理容師学校時代に鋏の握り方を教えてくれた父の記憶が蘇る。

「芝山理容室は僕が続ける」と豪語する俊和。

微かに父の右指が動いた。父は握った鋏(シザー)を開いたまま亡くなった。

跡を継ぐ気がない芝山俊和の気持ちが、父の仕事ぶりを知ってから変わった。
 床屋がどうなるのか気になる筋書き。

親と対峙するときは必ずあるものだが、俊和は親のやさしさに恵まれていたようだ。

心温かい雰囲気に感動もの。

残りの人生をきちんと描き直した父親の最期に、シザーを持つ姿こそベテラン職人。

尊敬しかない。

第五話 高架下のタツ子

沙也は、ショウのアトリエ前で女装のタツ子に職業を訊ねた。

電車が緊急停止した高架下でタツ子は、不仲な両親、母親は家出したと語り、「終電の神様、わたしが乗ればそれは終電――それが人生、先に行けない行き止まり」と歌いながら、たち去った。

元芸人のタツ子は相方の覚醒剤事件で職を失い、簡易宿泊所に住みながらストリップ劇場の台本書き生活をしていた。

「見たくて来たんじゃない客にコントを見せて、大笑いさせる」が信条だった。

酒浸りの父親は江ノ電に飛び込み自殺。相方はK駅で飛び込み自殺――とショウが沙也に説明する。

「先に死ぬなよ」と沙也に投げかけるショウに、「こっちのセリフ――」と返す沙也の手は何度も震えた。

明るくふるまいながらも辛く切ない過去をもつタツ子に、無常を感じ、思わず励ましたくなる。

二人がタツ子から学んだ人生の重み。何ともやるせない気分だ!

第六話 赤い絵の具

嵯峨野仁美には、友人がいない。

学校はさぼりがちだが、公園で風景画を描き、美大進学を夢見ている。

ある日、水彩画の緑に赤色が欲しいと思った仁美は、切らした赤絵の具の代わりにカッターナイフで左手首を切った。

意識を失い病院へ運ばれた仁美が「血の色が欲しかったから」と告げると、母は呆れた。

仁美が富田にからかわれた過去から、担任重山は「いじめで仁美が自殺未遂」と思い込み、富田弘道に事態を告げた。

その後、富田の欠席が続いた。

K駅での緊急停止に不安が過ぎった仁美は、駅ホームで列車に飛び込もうとする富田を目撃した。

周囲に抑えられた富田に、「ちがうの。勘違いなの」と仁美は叫んだ。

重苦しい事態だが、若い青春の一幕。
 清々しくどこか懐かしくも感じた。

人のために初めて動いた彼女が一歩前進、ホッとし感動的で素晴らしい。

第七話 ホームドア

広田喜美子は駅のホームから転落し男性に救われた。

男性は名前も住所も不明。

駅員の記憶では「スカートを穿いていた」。

当時、身ごもっていた大学生の喜美子。

息子が小学生のときに離婚した。

喜美子は恩人を捜すため、転落した駅の売店に勤め始めた。

転落から33年後、ホームドア設置のため売店が閉店になる日、喜美子は通称ナカノと呼んでいる常連客が、スカート姿なのに気づいた。

捜す相手は毎日顔を合わせていた。

「大丈夫。ここです。無事です」と喜美子は、当時の男性の言葉を口にした。

思わずナカノとハグを交わす喜美子。

まもなくホームドアができる。

もう転落する人はいなくなると、喜美子は涙ぐんだ。

ライターのコメント

男性は、何度か登場した女装男性たちの仲間だろうかと思わせる。

様々な人の生きざまに偏見を感じさせない優しい場面が好印象だ。

見た目で判断できない人生。

人知れず荷を背負った人の姿が幾つも浮かぶ。

最期に気づかせてくれた神様に乾杯!とても爽やかだ!

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