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【アルキメデスは手を汚さない】

読むのにかかる時間 約 6 分

目次

インフォメーション

題名アルキメデスは手を汚さない
著者小峰 元
出版社講談社
出版日2006年9月15日
価格649円(税込)

登場人物

・柳生隆保
 17歳 豊能高校2年 アルキの会中心メンバー

・柳生美沙子
 隆保の姉 大阪の貿易商社OL

・柳生幾代
 隆保、美沙子の母親 生命保険会社外交員

・亀井正和
 美沙子の不倫相手 大阪貿易商社勤務 結婚三年目 妻と二歳の子ども

・亀井久美子
 正和の妻

・柴本美雪
 17歳 隆保のクラスメート 琵琶湖グループ アルキの会メンバー

・美雪の父親
 柴本工務店社長

・内藤規久夫
 17歳 隆保のクラスメート アルキの会メンバー

・延命美由紀
 17歳 隆保のクラスメート 琵琶湖グループ アルキの会メンバー

・田中信博
 17歳 クラスの弁当せり売り役 投資に興味をもつ

・野村恒男
 豊中東警察署捜査課 巡査部長

・藤田政幸
 豊能高校教師 2年担任 国語科

・芳野宏六
 葬儀社の下請け運搬係 置引きなど犯罪裏稼業

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

少女が死んだ・少年が倒れた

大阪府豊中市の高級住宅街で葬儀が行われた。

亡くなったのは柴本美雪17歳。

喪主柴本健次郎は死因をごまかすが、『中絶失敗』によるものと噂が広がる。

葬儀社運搬係の芳野は、ニセ刑事に成りすましネタを探る。

健次郎は、噂を流した奴がカタキと決めつけ、芳野の情報から内藤の名を聞き、豊能高校へ乗り込む。

初七日法要で主だった生徒を呼び犯人あぶりだしを企む健次郎は、美雪と同級生女子3人との琵琶湖行きを怪しむ。

生徒たちは美雪が父親批判をしていたことを告げ、健次郎の手がけた不正マンション建設にまつわる反対住民の買収や内藤の祖母の死と日照問題を口にした。

初七日法要に参列した内藤の弁当を田中がセリにかけ、柳生隆保がセリ落とした。

弁当を食べた隆保は、ヒ素混入の疑いで緊急入院する。

豊中東署の野村はヒ素の件で豊能高校に来校し、そこで美雪の件を聞かされた。

美雪は手術後にチアノーゼで血圧低下、酸素吸入の緊急措置だった事実。

亡くなる直前、美雪は「アルキメデス」と言い残した。

創立50周年記念祭のクラス英語劇は「アルキメデス」。

アルキメデス役の隆保が全裸で駈け抜ける姿を美雪は目撃していた。

野村は生徒の性に関する見解を教師の藤田に訊ねた。

実態調査内容を伝える藤田に、「わが校にふしだらな生徒はいない」と突然、傍にいた校長が啖呵を切った。

青年が消えた

姉の美沙子と亀井が見舞いに来たが、隆保は亀井を嫌っていた。

美沙子は妻子ある亀井と不倫しており、ずるずる続く関係に母親の幾代も困惑していた。

隆保の修学旅行に合わせて、幾代は職場の温泉旅行参加を予定した。

出発日、美沙子ひとりの自宅に亀井が現れる。

一方、幾代は体調不良で旅行をやめて帰宅した。

慌てて亀井を中二階に隠す美沙子。

旅行不参加の連絡を美沙子に頼む幾代。

連絡後に戻った美沙子は中二階に亀井がいないと知り安心した。

後日、亀井の妻久美子は夫の捜索願いを警察に提出した。

野村は美沙子の聴取に柳生家へ向かった。 

幼児が舐めた・老婆が感謝した

亀井久美子の尾行で、幾代がセメント袋を買い込んだことが露見した。

風呂場修繕と答える幾代だったが、野村は中二階床下から亀井の遺体を発見する。

居直る幾代はロープで亀井の首を絞めたと答えた。

美沙子は失神し病院に運ばれたが、その後、姿が消えた。

隆保も警察から自宅に帰されたが姿を消した。

野村は柳生家の中二階襖で密室状態の中に、鉄串が刺さった美沙子の遺体を発見した。

帰宅した隆保は、一緒に死のうと迫る美沙子を押しのけ逃げたことを供述した。

不慮の事故だった可能性を感じた野村は、美沙子が隆保を庇って密室をつくったと推理した。

隆保のアリバイ工作を疑い、野村は仮説を立てる。

弁天町駅から国電で大阪駅、阪急梅田駅、豊中駅へ。戻りは鷲羽2号で新大阪駅から高松港へ。

野村は琵琶湖民宿での美雪と内藤の話を健次郎から聞かされた。

内藤は美雪とは合意のうえだと告白した。

内藤の祖母の死に関して、美雪は父親に代わり許しを請うたと話した。

内藤は健次郎の傍にいた芳野に気づき、ニセ刑事だと叫ぶ。

一方、芳野は大阪駅で『こいつを見た』と隆保を指さした。

隆保は芳野の置引きから老婆を助けたことで顔を覚えられていたのだった。

母が庇った・死体が呻いた

隆保の供述が始まった。

隆保は、アルキメデスの英語劇仲間と共に、『我慢のならないことを潰す』ため、『アルキの会』を発足した。

第一目標は、内藤の祖母の悶死の元凶、不正マンション建設の柴本健次郎を貶めることだった。

延命美由紀は、健次郎の制裁には美雪を犯すことだと計画したが、美雪を好きな内藤は反対した。

決行前、内藤は美雪に父親制裁の目的を話すと、美雪は同意した。

当日、琵琶湖で隆保は自ら役目を内藤に譲った。

内藤は、睡眠剤入りコーラを美雪に飲ませると、隆保にみせかけて実行した。

美雪を妊娠させた内藤は自責の念にかられる。

アルキの会の挫折を心配した隆保は、警告のつもりで内藤の弁当にヒ素を入れた。

第二目標は、姉の不倫相手亀井にヤキを入れることだった。

修学旅行中に自宅に戻り、隠れていた亀井の首を腕で絞め、再び旅行先へ戻った。

だが、大阪駅で老婆を助けたことで、隆保のアリバイは崩れた。

一連の供述から野村は、美雪に告訴の意思なく亡くなったのであれば、輪姦と呼べるのか?と疑問に思う。

死体検案調書は『死因は窒息死、凶器は索状物』。

扼殺跡から、息を吹き返した亀井を幾代が洗濯ひもで絞め殺したと推定された。

事件後、孤立無援になった隆保を助けようと田中はアルキの会メンバーに声がけする。

「殺していないのだから、柳生君の手は汚れていない」と語る延命だが……。

「アルキメデスは大勢のローマ人を殺した。汚れていないと言えるか」と田中は反論した。

ライターのコメント

70年代の作品だが、謎解きをしながらも、その時代の生活感や高校生の実態などが描き出され話題は尽きない。

登場する高校生の頭の切れは冴えて、発想が実にスマートだ。

脇役と思いきや、弁当セリの田中の経済意識の高さや貪欲な生活力に頭が下がる。

高校生の清々しい姿や達者な言動に、羨ましくも懐かしさを覚え、テンポが爽快だ。

学生運動や赤軍闘争も今のまた昔。

国鉄(現在のJR)や宇高連絡船(瀬戸大橋開通に伴い、現在は運航していない)など名残を匂わせる。

現在は犯罪が増えて凶悪化傾向だが、生きづらい世の中から眺めるこの作品には、担任や刑事たちのふるまいが厳しい反面、一歩下がって見守るような温かい雰囲気、よき時代の心地よさを感じる。

世代間ギャップはあるものの、時代に関わらず、いつの時代も若者がどう生きようか模索する姿は共感する。

昼休み中の学校を「昼下がりの養老院の風景」と表現したのは頷けた。

青春推理のパイオニア作品。

因みに、「テロリストのパラソル」に抜かれるまで、「アルキメデスは手を汚さない」は乱歩賞単行本部門で歴代トップのセールスランキングだった。

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