【ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来】

インフォメーション
題名 | ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来 |
著者 | ユヴァル・ノア・ハラリ 著 柴田 裕之 訳 |
出版社 | 河出書房新社 |
出版日 | 2018年9月 |
価格 | 2,090円(税込) |
「私」は虚構なのか? 生物はただのアルゴリズムであり、生物工学と情報工学の発達によって、資本主義や民主主義、自由主義は崩壊する。『サピエンス全史』の著者が描く衝撃の未来!
私たちはどこへ向かおうとしているのか。人工知能や遺伝子工学といったテクノロジーとホモ・サピエンスの能力が合体したとき、人類は何を求め、何のために生きるのか、そして世界に何が起きるのかを問う!
人類はどこへ向かうのか?
生物はただのアルゴリズムであり、
コンピューターがあなたのすべてを把握する。
生物工学と情報工学の発達によって、
資本主義や民主主義、自由主義は崩壊していく。
「科学技術の終焉か? パンドラの箱が今開く。」
──山極壽一(京都大学総長)
「人類史と先端テクノロジーを見事に融合した傑作。」
──佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
引用:河出書房新社
ポイント
- 21世紀の科学は、自由主義の秩序の土台を崩しつつある。
- 「自由」という神聖な単語は、まさに「魂」と同じく、具体的な意味などまったく含まれない空虚な言葉だったのだ。
- 特定の願望が自分の中に湧き上がってくるのを感じるのは、それが脳内の生化学的なプロセスによって生み出された感情だからだ。
サマリー
研究室の時限爆弾
自由主義と科学
2016年の世界は、個人主義と人権と民主主義と自由市場という自由主義のパッケージに支配されている。
とはいえ、21世紀の科学は、自由主義の秩序の土台を崩しつつある。
科学は価値にまつわる疑問には対処しないので、自由主義者が平等よりも自由を高く評価するのが正しいのかどうか、あるいは、集団よりも個人を高く評価するのが正しいのかどうかは判断できない。
一方、自由主義も他のあらゆる宗教と同じで、抽象的な倫理的判断だけではなく、自らが事実に関する言明と信じる者にも基づいている。
そして、そうした事実に関する言明は、厳密な科学的精査には到底耐えられないのだ。
自由主義者が個人の自由をこれほど重視するのは、人間には自由意志があると信じているからだ。
自由主義によれば、有権者や消費者の決定は、必然的に規定されている決定論的なものでもランダムなものでもないという。
人はもちろん外部の力や偶然の出来事の影響を受けるが、けっきょくは、一人ひとりが自由という魔法の杖を振るって、物事を自分で決められる。
だから自由主義は有権者や消費者にこれほどの重要性を与え、心の命じるままに従い、良いと感じられる事をするように指示する。
森羅万象に意味を与えるのは私たちの自由意志であり、他人は私たちが本当はどう感じているかを知ったり、何を選ぶかを確実に予測したりすることはできないので、ビッグ・ブラザーの類に頼って、自分の関心や欲望の面倒を見てもらおうなどとするべきではない。
人間には自由意志があると考えるのは、倫理的な判断ではない。
それはこの世界についての事実に関する記述だと称される。
自由意志と現代の科学との矛盾は研究室の持て余し者で、多くの科学者はなるべくそれから目を逸らし、顕微鏡やfMRIスキャナーをのぞき込むばかりだ。
自由意志の存在
18世紀には、ホモ・サピエンスは謎めいたブラックボックスさながらで、内部の仕組みは人間の理解を超えていた。
だから、ある人が何故ナイフを抜いて別の人を刺し殺したのかと学者が訪ねると、「なぜならそうすることを選んだからだ。その人は自分の犯罪の全責任を負っている。」というような答えが受け容れられた。
ところが20世紀に科学者がサピエンスのブラックボックスを開けると、魂も自由意志も「自己」も見つからず、遺伝子とホルモンとニューロンがあるばかりで、それらはそのほかの現実の現象を支配するのと同じ物理と化学の法則に従っていた。
今日、ある人がなぜナイフを抜いて別の人を刺し殺したのかと科学者が訪ねたときには、「なぜなら、そうすることを選んだからだ」という答えは通用しない。
代わりに、遺伝学者や脳科学者はもっとずっと詳しい答えを与える。
殺人につながる脳の電気化学的プロセスは、決定論的かランダムか、その組み合わせのいずれかだ。
だが、けっして自由ではない。
私たちの科学的理解が及ぶかぎりでは、決定論とランダム性がケーキを山分けしてしまい、「自由」のとりわけは1かけらすら残っていないようだ。
じつは、「自由」という神聖な単語は、まさに「魂」と同じく、具体的な意味などまったく含まれない空虚な言葉だったのだ。
自由意志は私たち人間が創作したさまざまな想像上の物語の中にだけ存在している。