【最貧困女子】
インフォメーション
題名 | 最貧困女子 |
著者 | 鈴木 大介 |
出版社 | 幻冬舎 |
出版日 | 2014年09月30日 |
価格 | 858円(税込) |
今や働く単身女性の3分の1が年収114万円未満。中でも10~20代女性を特に「貧困女子」と呼んでいる。
しかし、目も当てられないような地獄でもがき苦しむ女性たちがいる。
それが、家族・地域・制度(社会保障制度)という三つの縁をなくし、セックスワーク(売春や性風俗)で日銭を稼ぐしかない「最貧困女子」だ。
可視化されにくい彼女らの抱えた苦しみや痛みを、最底辺フィールドワーカーが活写、問題をえぐり出す!
引用:幻冬舎
ポイント
- 人は低所得に加えて「三つの無縁」「三つの障害」から貧困に陥る。
- 差別や批判を恐れ、必死に経済的・精神的破綻を隠そうとしている。問題の闇が深い。
- 持たざる者は選別され、貧困の中に埋没していく。
サマリー
はじめに
そもそも貧困とは何か。
僕なりの考察では、人は低所得に加えて「三つの無縁」「三つの障害」から貧困に陥ると考える。
「家族の無縁、地域の無縁、制度の無縁」の三つの無縁と、「精神障害、発達障害、知的障害」の三つの障害である。
世の中には目も当てられないような貧困の地獄の中でもがいている女性、そして未成年の少女たちがいる。
セックスワーク(売春や性風俗産業)の中に埋没する「最貧困女子」。
僕が見てきた最も悲惨な風景であった。
見えづらい、分かりづらい、面倒くさい、そんな「最貧困女子」を、忘れないで欲しい。
見捨てないで欲しい。
見下さないで欲しい。
彼女らの抱えた不可視の痛みと苦しみを、この本では可視化していきたい。
最貧困女子
持たざる者
取材の入り口は、大手出会い系サイトでシングルマザーと明記していなくても子供が居ておかしくない年齢をプロフィールに入れている女性に向けて、正面から取材依頼のメッセージを送るというシンプルな方法をとった。
20余名残った中から、1年余りで10名弱に取材を行った。
メールや電話で取材を重ねていた一人と待ち合わせをした時のことだ。
45分遅れて登場した彼女を見て、居たたまれない気分になった。
忘れられない光景である。
某大手出会い系サイトにほぼ毎日売春相手の募集を書き込む、いわば常連だった。
彼女を「買う」男は稀である。
それでも書き込みを続ける理由は、8歳と6歳の子供がいるためだという。
彼女は、圧倒的に「何も持たざる者」であった。
生い立ちからして尋常ではない。
彼女の手に残る根性焼きやリストカットの痕跡がその歴史を物語っていた。
日々のネグレクトの中で育ち、居場所を求めて出会い系掲示板に書き込みを始めた。
つかの間の結婚生活も夫のDVにより破綻。
二人の子供を抱えて就職先もなく、頼れる家族も、親戚もいない。
一人で子供を守ってきた。
抜け出せない最貧困
取材した20余名がすべて彼女のようなタイプではなかったが、陥った貧困の凄まじさは、ほぼ全員に共通するものだった。
そして「三つの無縁」「三つの障害」の体現者であった。
彼女は不可視化された貧困の代表であったと思う。
彼女らは既に経済的にも精神的にも破綻してしまっているが、わずかばかりの金を、出会い系サイトを介した売春で稼ぐことで、必死にその破綻を隠そうとしている状態であった。
生活保護受給者への差別や子供がいじめられることへの恐怖もあり、結果的に彼女たちは自らの手で自らの窮状や苦しみを覆い隠し、不可視にしてしまっていたのだ。
一見痛みの大きさも、そもそもの存在自体も分かりにくく、自己責任にも見えかねない状況の中で、差別や批判の対象となってしまっている。
問題の闇は深い。