【特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方】

インフォメーション
| 題名 | 特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方 |
| 著者 | 平熱 |
| 出版社 | かんき出版 |
| 出版日 | 2023年3月 |
| 価格 | 1,650円(税込) |
「みんなといっしょにあそべるようにさせなきゃ」
「空気が読めないのをどうにかしなきゃ」
んー、がんばる方向ちがってない?
Xフォロワー8万人。
特別支援学校で働く平熱先生の、はじめての本がついにできました。
発達につまずきのある子どもたちと、そのまわりにいる大人のみなさんのために、
特別支援教育をベースにした「困った!」を小さくするヒントが満載。
将来子どもたちが社会に出たとき、たくさんの人やサービスに助けてもらいながら、少しでも自立して生きていくために。いっしょに生活する大人ができるサポート、知っておいてほしいことを、
むつかしい話やきれいごとは一切なしで、精一杯書きました。
「どうしてできないんだ!」ではなく、
「どうやったらできるかな?」を考えてく特別支援教育って最高じゃない?
引用:かんき出版
ポイント
- 特別支援教育は、全人類に有効である。
- 特別支援教育で使用される支援は、その多くが私たちの日常にも生かされている。
- 特別に支援が必要な子どもたちへ接する際の姿勢は、相手の年齢や障害の有無に関わらず、私たちが他者と接する際にも大切にしたいものである。
サマリー
特別支援教育ってなんだろう?
特別支援教育は、子育てに有効
「特別支援教育ってなにか知っていますか?」と聞かれたら、多くの人は「障害のある子どものための特別な支援教育でしょう」と答えるだろう。
実際に、文科省のHPにも次のように定義されている。
「特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。(文部科学省HPより)」
このように、特別支援教育はその範囲を「障害のある子どもたち」と定義している。
しかし、そこから先の「ひとりひとりの困りごと(教育的ニーズ)を把握する」「得意なことは伸ばし、苦手なことは少しでも改善・克服する」「生活や学習上の困りごとを解決していく」という部分については、障害の有無に関わらずどんな子どもにもあてはまることである。
さらに、子どもだけでなく、私たち大人にも高齢者も、誰にとっても生きていく上で大切な姿勢である。
特別支援学級に通う子どもたちは、その障害(特性)ゆえの生きづらさや困りごとを抱えている。
私たちがすぐにわかったり覚えたりできることに時間や手間がかかったり、教科書と黒板を使って集団で勉強することが難しい場合がほとんどだ。
だから、特別「に」支援することは必要だが、特別「な」支援は必要ない。
なぜなら、彼らに対する支援は一見特別な支援に思えるが、実のところそのほとんどは私たちが日常的に触れている支援ばかりなのである。
その一例として「視覚支援」が挙げられる。
これは、「パッと見でわかる」支援のことである。
特別支援学校では、絵カードや一日のスケジュール表、やり方の手順書など、いたるところで「子どもがパッと見でわかる」「見通しを立てられる」ように工夫がなされている。
この視覚支援は私たちの日常にもたくさんちりばめられており、ファミリーレストランのメニュー表には料理名が文字で記載されているだけでなく写真がふんだんに掲載されている。
街中や商業施設では「トイレ」の文字だけでなく、トイレを表す男女のピクトグラムが使われている。
このように、特別支援教育はなにも特別なことではなく、子どもだけでなくすべての世代のあらゆる人にとって、障害のあるなしに関わらず有効な、とても身近な支援の方法なのである。
子どもの「自立」をどう考える?
子育てにおける最大のテーマは「子の自立」だろう。
「自立とはどのような状態を指すのか?」とは難しい問いだが、特別支援学校で働く著者は、「今の自分ができることとできないことを知ったうえで、できることを増やし、できないことを多くの人やものに助けてもらいながら生活する力を身につけること」が自立であると考える。
当たり前だが、すべてのことが自分ひとりでできる必要はない。
健常者であっても誰もが自転車のタイヤのパンクを直せるわけではなく、自分で自分の虫歯の治療ができる人はまずいないだろう。
ただし、生活していく上で「自分でできた方がいいこと」はある。
食事や入浴などの身辺自立、炊事洗濯など基本の家事、文字の読み書き、金銭管理、ルールやマナーの理解などである。
これら身の回りのことを自分でできるようになることがゴールであるが、私たちにとっても、障害のある子どもたちにとっても、自分ひとりでこなすには難しいこともたくさんある。
その場合に、「ここまでは自分でできるけれどここからはできない」「このままではできないけれどこんなサポートがあればできる」などと、できるできないを線引きしてサポートの方法をまわりの人に伝えられる状態になることが理想的である。
発達につまずきのある子どもをサポートするために
子どもの「困った行動」をゼロにすることにこだわらない
発達につまずきのある子は、いろいろな「困った行動(言動)」をしてしまうことがある。
大きなものから小さなものまで、許せるものから許せないものまで、事の大小に関わらず「困った行動」はなくしていくべきだが、それらをすべてゼロにすることは子どもにとっても大人にとっても非常に難しいことだ。
そのため、環境や周囲の人たちのサポートによって不適切な行動をなるべく減らしていく、可能な限り弱めていくことがポイントになる。
例えば、授業中に椅子に座り続けていられない子がいる。
私たちはつい「授業中なのに立ち歩いている」という目に見える行動に着目し叱責してしまいがちだが、見えない部分にその理由があるのかもしれない。
授業中の正しい振舞い方やルールを知らないだけかもしれないし、授業の内容が全くわからないのかもしれない。
ウロウロしてみんなの気を引きたいのかもしれない。
子どもの様子をよく観察し、見えない部分に目を向けて原因を探り解決策を探すことが大切だ。
困った行動が出たときは、どうしてできないの!と声を荒げて怒るのではなく、「そもそも防ぐことはできなかったか」「どうすればリカバリーできるか」「どうやって謝ればいいか」「次はどうやったらうまくやれるか」を子どもと一緒に考えたい。
