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題名代償
著者伊岡 瞬
出版社KADOKAWA
出版日2016年5月25日
価格880円(税込)

登場人物

・奥山圭輔
 小学六年 世田谷区の西はずれの戸建てに両親と暮らす

・奥山正晴
 圭輔の父親 商社マン

・奥山香奈子
 圭輔の母親

・浅沼達也
 小学六年 圭輔と違う学校に通う 

・浅沼道子
 達也の母親 宝石訪問販売業自称

・浅沼秀秋
 達也の父親 経営コンサルタント自称

・諸田寿人
 圭輔の中学時代からの同級生

・牛島肇
 寿人の伯父 大学助教授 国文学

・木崎美果
 圭輔、寿人の中学同級生

・佃 紗弓
 木崎美果の妹

・門田芳男
 運送業 

あらすじ

すべては火災から始まった! 

裕福な家庭で育った小学六年の奥山圭輔。

ある日、奥山家に遠縁の浅沼道子が達也を伴い訪ねてきた。

彼らは私鉄沿線を挟んだ奥山家と反対側の古い都営団地に引っ越してきた。

隣街の小学六年の達也は頻繁に奥山家を訪れる。

達也は人前では良い子ぶり、人を騙す強かさがあった。

圭輔は達也と遊ぶのが嫌だが、気弱ゆえ両親に告げられない。

そんな中、家の中のお金や金品、下着までも無くなった。

圭輔の両親は達也を疑い距離をとるが、浅沼家の都合で達也を預かることになる。

クリスマスの日、達也は部屋で煙草を吸った。

咎める圭輔に煙草を吸わせる達也。

巧みに人を誘い動かす術を持つ。

達也が作ったカレーを圭輔の両親が食べると、その直後、二人は睡魔に襲われる。

その晩、自宅は火災となり圭輔は達也に起こされる。

両親は先に逃げたとの達也の言葉を信じ、圭輔は達也と避難する。

家は焼け両親は焼死。

出火原因はソファー付近の煙草の火種――達也から「お前が吸った煙草じゃないか」といわれた圭輔は、自分の所為だと悩む。

不幸のはじまり   

親戚が引き取りを拒み、圭輔は浅沼家の『後見人』承諾に応じ、達也たちと暮らしはじめた。

遺産や金庫は道子の手もとに置かれ、わずかなこづかいしか貰えない圭輔。

道子たちは羽振りの良い生活。

学校から戻れば風呂掃除や買い物が待っていた。

秀秋が居ない日、圭輔は道子の部屋から異質な声を耳にした。

道子と達也のあえぎ声と、「あいつ、じゃまだよな。ダムなんてどうかな」の話し声に、圭輔は只ならぬ空気を感じた。

その後、秀秋は音信不通になった。

中学入学の頃、道子たちは賃貸マンションに引っ越した。

奥山家の遺産や死亡保険金なのにと思いながらも、弱気な圭輔は従うしかなかった。

クラスでも浮いた存在で、図書室にこもりがちの圭輔は諸田寿人と出会い、互いに打ち解けあう。

寿人の伯父牛島肇の家へ招かれると、圭輔は身の上を話した。

一方、クラスメートの木崎美果に好意をもつ圭輔に気づいた達也は、執拗に美果に目をつける。

誘いを断る美果。

達也は仲間を連れて美果を襲った。

寿人の通報で加害者が捕まるが、達也だけは言い逃れた。

張本人は達也だと確信する圭輔。

だが、何もできない歯がゆさ。

こいつをどうにかしなければ――と初めて強く思う圭輔だった。

任意弁護指名    

中学卒業時、牛島肇が後見人となり、圭輔を道子たちから連れ出してくれた。

両親の遺産と土地売却代は返らなかったが、回収できた7百万円分を牛島夫婦は圭輔のために預金した。

白石法律事務所の弁護士になった圭輔。

ある日、安藤達也の事件裁判の弁護を名指しで頼まれる。

安藤に改姓した達也。

国選弁護人を廃して任意弁護の指名。

戸惑う圭輔だったが、弁護を引き受けて達也と接見する。

圭輔は木崎美果が性暴力を受けた過去を確かめるが、達也は平然と否定した。

人をたぶらかすのが巧い達也。

接見中、過去の火災に触れられ、弱気がぶり返す圭輔。

笑みを浮かべる達也に、こいつは裁判が不安ではないのかと圭輔は疑心暗鬼になった。

達也の容疑は丸岡運輸事務所での本間保光殺害、現金強奪。

近隣女性のを目撃、指紋付着紙幣や当初の自白が根拠だったが、一転、無実を主張。

裁判直前に佃紗弓が証人として名乗り出て、事件当夜、達也と過ごしたと証言することを約束する。

一方、達也の罪状を調べている寿人から、奥山家の火災は失火ではなく、放火ではないかと報告が入った。

火災前、両親はカレーに入れられた睡眠導入剤で眠らされたと推理。

遺体検案書には死の直前、母の香奈子に情交跡があった記されていた。

二人の脳裏に達也の顔が浮かんだ。

弁護人危機        

裁判当日、佃紗弓は検察側証人へ寝返った。

圭輔から嘘の証言を強要されたことや、圭輔が達也と同居した過去を暴露した。

紗弓は美果の妹だった。

無実の決定的証拠は、犯行時刻に達也と道子が如何わしい行為に及んだSNS画像。

達也の一芝居は自分を貶めるためだと気づいた圭輔は、任用弁護から外され、弁護士資格はく奪の窮地に陥る。

達也の犯罪歴を探っていた寿人は、すべては過去の事件の共犯者が関わっていることに気づく。

丸岡運送事件は門田芳男の犯行。

群馬の白骨体は浅沼秀秋とほぼ断定される。

道子が主犯で、遺体搬送は達也と門田の共謀と推理した。

やがて門田の遺体が荒川で発見された。

世の中には矯正できない人間がいる――寿人の言葉が、弱気な圭輔に火をつけた。

圭輔は門田が遺した秀秋の遺体搬送時の証拠テープを得る。

寿人と共に、道子と達也、紗弓と対峙する。

紗弓は、すべて達也が仕組んだと話すが、達也は道子のしたことで、俺は知らないとシラを切る。

証拠を警察へ渡すと言い残して圭輔と寿人はその場を後にした。

深夜、道子逮捕と達也の重体報道が流れた。

ライターのコメント

穏やかに暮らしていた家庭に、じわじわと入り込んでくる恐ろしい家族。

一見まともに見えるが、一転して強姦や盗み、放火を平気で実行する粘着質な達也からは、容赦しない冷酷さが感じられる。

人をコントロールする能力の高さ、誘導し利用する巧みさ。

これは天性の悪人だ。

寿人は『世の中には矯正できない人間もいる』と言い放つ。

まさにドンピシャ!寿人や牛島夫婦のおかげで、圭輔は家庭の記憶を取り戻せた。

達也のような人間が巷にいるのかと思うだけでも怖い。

犯罪者か否かわからない人間こそ、恐怖を与える。

ハラハラし衝撃的で、にじり寄る恐怖を感じさせるサスペンスは、他のミステリーを凌ぐ秀逸だ。

嫉妬深く何を考えているのかわからず、逆らえない達也に大きな代償を払わせた結末には、ホッとした清涼感を味わえた。

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