【破天荒フェニックス オンデーズ再生物語】

インフォメーション
題名 | 破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 |
著者 | 田中修治 |
出版社 | 幻冬舎 |
出版日 | 2018年9月 |
価格 | 1,760円(税込) |
僕は、「絶対に倒産する」と言われたオンデーズの社長になった。企業とは、働くとは、仲間とは――。実話をもとにした、傑作エンターテイメントビジネス小説。
2008年2月。小さなデザイン会社を経営している田中修治は、ひとつの賭けに打って出る。それは、誰もが倒産すると言い切ったメガネチェーン「オンデーズ」の買収――。新社長として会社を生まれ変わらせ、世界進出を目指すという壮大な野望に燃える田中だったが、社長就任からわずか3カ月目にして「死刑宣告」を突き付けられる。しかしこれは、この先降りかかる試練の序章にすぎなかった……。企業とは、働くとは、仲間とは――。実話をもとにした、傑作エンターテイメント小説。
引用:幻冬舎
ポイント
- この物語は、そんな流行りの若手IT社長のもとに、仕事を通じて交流のあった編集者が、全国の60店舗を展開する低価格メガネチェーン「オンデーズ」の創業者で、会長職に就いている、松林氏を紹介してきたところからはじまる。
- 皆が一丸となれるようなことに挑戦をして、今度こそ成功を収めたい、スタッフの心に爪痕を残したい。そんな気持ちに駆り立てられて、この「全品半額セール」を強く推し進めたのだ。
- オンデーズが本当に売らなくてはいけないのは、安いメガネでもお洒落なメガネでもない、「メガネをかけて見える素晴らしい世界」だったのだ。
サマリー
トラックのハンドルを握るのは誰だ?
僕の名前は田中修治、30歳、肩まで伸びた毛をほぼ金髪に染め、破れたジーパンに黒のジャケットスタイルをトレードマークに、数名の社員たちと小さなデザイン企画の会社を経営している。
この物語は、そんな流行りの若手IT社長のもとに、仕事を通じて交流のあった編集者が、全国の60店舗を展開する低価格メガネチェーン「オンデーズ」の創業者で、会長職に就いている、松林氏を紹介してきたところからはじまる。
僕は面白そうなことは何でも首を突っ込みたがる性分なので、オンデーズの内紛に巻き込まれるような形で「株式売却」に関わってしまったのだ。
金融のプロとして僕のもとに派遣されたパートナーの奥野さんは、
「いいですか、20億の売上しかないのに14億の負債を抱えているということは、2tトラックの荷台に、1.4tの砂利がのってるようなものなんです。そんなトラック、いつひっくり返って大事故になるかわからないんですよ!」
上手いたとえ話をするなと感心した。
だが、ダメなのは運転手で、運転手さえ交代すれば、会社は良くなるはず。
そして僕自身、30歳を迎えるにあたり、経営者としてこの辺でひと勝負をかけたいという気持ちが強くあったのだ。
「とにかく、僕はオンデーズの買収に名乗りを上げることにするよ」
メガネの奥で目を白黒させている奥野さんを前に、半ば押し切るように話をまとめた。
ハンデを撥ね飛ばす破天荒な施策
就任1年目から本格的に開始したオンデーズのフランチャイズ展開が順調に成果を上げ、毎月連続で増収、増益を果たし、成長軌道に乗り始めている。
しかし、「決定的な知名度不足」という大きな問題が立ちはだかっていた。
間近に迫った新店舗オープン販促会議の席上、僕は「全品半額セール」という提案をした。
この提案には営業部だけでなく、他の部署の部長たちからも反対の嵐だったが、
皆が一丸となれるようなことに挑戦をして、今度こそ成功を収めたい、スタッフの心に爪痕を残したい。
そんな気持ちに駆り立てられて、この「全品半額セール」を強く推し進めたのだ。
こうしてまず、沖縄県に初めてオープンする「OWNDAYS名護店」のオープンセールで全品半額を実行することになり、結果、大盛況であった。
押し寄せるお客様、対応に追われるスタッフ、まるで強盗にでもあったかのようなスカスカの商品棚、そして気が付くと、閉店時間を迎えていたのだ。
「最初はこんなもんだろう」
僕は今にも泣いてしまいそうだったが、その気持ちを皆に悟られないよう偉そうに格好を付けてつぶやいた。
成功の歓喜に酔いしれていたのも束の間、誰もが予想していなかった、あの「未曾有の大災害」が日本を襲うことになったのだ。
被災地メガネ店での出会い
2011年3月16日、震災から5日後のことである。
対策会議の席上、大企業各社が表明し始めている被災地支援について、オンデーズは「避難所での出張メガネ屋」という形で、メガネを無料でプレゼントしてまわることにした。
2011年3月25日からスタートしたメガネ配布ボランティアだったが、そこには世界の不幸を一つ残らずかき集めて敷き詰めたような、無残な世界が広がっていた。
しかし、各自が自分のできることを精一杯やるしかない。
そんな中、道路事情が極端に悪いため、後回しにされている小さな避難所へ到着した。
全ての作業を終え機材を片付けていると、一人のおばあちゃんがパンやお菓子を両手に抱え、お礼がしたいと僕らのもとへやってきた。
そのおばあちゃんは、朝一番にメガネを作ってあげた方だった。
「私には息子夫婦と二人の孫がいて、安否が分からず不安に押しつぶされそうだったの」
避難所には大きな掲示板があるのだが、字が小さくてメガネがないと何も見えないのだ。
そんな時、メガネを作ってもらえたおかげで、家族の無事を自分の目で確認することができた。
「見えるということは、なんて素晴らしいのだろう」と、おばあちゃんは大粒の涙をポロポロと流して何度も頭を下げた。
この出会いを通して、僕はとても大切なことに気づかされた。
オンデーズが本当に売らなくてはいけないのは、安いメガネでもお洒落なメガネでもない、