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【脳科学者の母が、認知症になる】

インフォメーション

題名 脳科学者の母が、認知症になる
著者 恩蔵 絢子
出版社 河出書房新社
出版日 2021年12月
価格 814円(税込)

記憶を失っていく母親の日常生活を2年半にわたり記録し、脳科学から考察。アルツハイマー型認知症になっても最後まで失われることのない脳の能力に迫る。NHK「クローズアップ現代」など各メディアで話題!

引用:河出書房新社

ポイント

  • 著者は脳科学者である。母親はかつて、じっと座っている時間がないほど活発で社交的な人であり、趣味も数多く持っていた。しかし、その母親がアルツハイマー型認知症を患ってしまった。
    それでも、治すことはできなくても、やれることはたくさんある。

  • デフォルト・モード・ネットワークとは、休んでいるときやリラックスしているときに活動が高まる、脳部位同士によって構成されたネットワークのことである。
    アルツハイマー型認知症では、このネットワークの活動が弱まることがあるため、本人がリラックスできることを見つけることが大切である。

  • アルツハイマー型認知症になることは、惨めなことだと思うかもしれない。しかし、他人が想像するアルツハイマー型認知症や、病気になる前に思い描いていたアルツハイマー型認知症と、現在、アルツハイマー型認知症を生きている本人の実感とは異なる可能性がある。少なくとも、アルツハイマー型認知症の人には、幸せを感じる能力が残されているのだ。

サマリー

音声で聴く

65歳の母が、アルツハイマー型認知症になった

それが認知症の始まりだったかどうかは分からない。

だが、いちばんよく覚えているのは、母親が後頭部に手をやる姿であった。

「なんでもないのよ。なんだったかしらね」と笑って頭を掻く母に、「何かが変だ」という不安が忍び寄った。

母親は一日のうちに何度も立ち止まり、頭を掻いていた。

著者は脳科学者である。

認知症とはどういうものかを文献で知っていたし、治療は早ければ早いほど良いといわれていることも理解していた。

しかし、いちばん身近な存在である母親がそうなるはずがないと信じてしまい、後頭部を掻く姿に気づいてから病院へ行くまで、結局、10ヶ月近くが過ぎていた。

告げられた病名は、やはり「アルツハイマー型認知症」。

母親はかつて、じっと座っている時間がないほど活発で社交的な人であり、趣味も数多く持っていた。

そんな人がアルツハイマー型認知症になるのだから、この病は無慈悲である。

人間には、どうしてもコントロールできないことがあるのだ。

「治す」ではなく、「やれる」ことは何か

海馬の凝縮がもたらすもの

アルツハイマー型認知症を完治させる薬は、今のところ存在しないが、進行を遅らせることができるかもしれない薬はある。

帰りの車の中で著者は、ほかに何ができるだろうかと考えていた。

「治す」ことにつながらなくても、「やれる」ことはたくさんあるのではないか。

病院で行われた脳の検査から、母親の状態について次の2つのことが分かった。

① 他の脳部位に比べて、海馬の萎縮が大きい
② 大脳皮質の後頭頂皮質の活動が低下している

いずれも、アルツハイマー型認知症に現れる典型的な脳の変化だ。

①の海馬の萎縮は、アルツハイマー型認知症で初期に見られる脳変化の1つである。

②の後頭頂皮質については、もともと海馬と後頭頂皮質は密接につながっており、「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる回路を形成している。

デフォルト・モード・ネットワークとは、休んでいるときやリラックスしているときに活動が高まる、脳部位同士のネットワークのことである。

人は、集中しているときに起こった出来事を、休んでいる時間に整理している。

後頭頂皮質や海馬は、この記憶の整理整頓において重要な役割を果たしているのだ。

母親の場合、このデフォルト・モード・ネットワークがうまく働いていないことが分かった。

デフォルト・モード・ネットワークを活性化させるには

たとえば、デフォルト・モード・ネットワークを活性化させる方法として、「ぼーっと散歩をすること」がとても良いとされている。

そうすると、「こんな花が咲いているのか」など、外界に対するさまざまな気づきが生まれる。

その気づきが意外にも、過去の出来事を思い出させて、内面的な気づきをもたらすきっかけになるのだ。

リラックスしてぼーっと歩くことで、知らず知らずのうちに適度な刺激を受け、デフォルト・モード・ネットワークが活性化し、記憶の整理が進むのである。

運動はアルツハイマー型認知症に対して、一定の効果が期待されている。

そこで著者は、まず「歩く」ことから始めるのがよいのではないかと考えた。

すすめてみると、父親と母親はさっそく、ほぼ毎日のように散歩に出るようになった。

この2年半の間、母親の症状に特別な変化があったわけではないが、それでも二人の散歩はずっと続いている。

どうやら、それが心地よい時間になっているようだ。

歩くという運動によって体調が整い、デフォルト・モード・ネットワークが活性化され、気づきややる気が生まれるなど、さまざまな効果があるかもしれない。

だがそれ以上に、父親と一緒に過ごす時間そのものが、母親にとって幸せな時間になっていたのである。

認知機能が失われても、残るものは何か

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© 音声: VOICEVOX 青山龍星(男性)、VOICEVOX NEO(女性)
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この要約の著者

大学で教育学を学んだ後、心理学にも興味を持ち、再び大学へ入学。
卒業後、心理カウンセラー(民間)の資格を取得して、地元の病院へ就職。
以後30年以上、さまざまな病院で医療従事者として勤務。
2023年、サマリーオンラインに参画。累計100記事以上の要約記事を制作。
「本で人生を変えてもらいたい」との想いで精進中。

好きな本:
『道をひらく(松下幸之助/PHP研究所)』
『私の生活流儀(本多静六/実業之日本社)』
『逆境を越えてゆく者へ(新渡戸 稲造/実業之日本社)』

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