【母性】

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インフォメーション

題名母性
著者湊かなえ
出版社新潮社
出版日2015年7月1日
価格781円(税込)

登場人物

・母(ルミ子)
 誰よりも実母を愛しており、母に喜んでもらい褒めてもらえることが彼女の幸せである。

・娘(清佳)
 母の愛情が自分に向いていないことを感じており、母から愛されたいと願っている。

・ルミ子の実母
 娘のルミ子や孫の清佳に対して、無償の愛を注いでいる。事故で亡くなってしまう。

・佐々木仁美
 ルミ子と同じ絵画教室の受講生で、田所の同級生。田所と結婚する意思のあるルミ子に忠告する。

あらすじ

女子高生の転落事故

市内高校に通う女子生徒が自宅から転落し倒れているところを母親が発見した、という新聞記事に目を引かれる女子教師。

警察は事故と自殺の両方で調査しており、発見者の母親は『愛能う限り、娘を大切に育ててきました。

そんな娘がこんなことになるなんて信じられません』と言葉を詰まらせる。

女性教師は、母性とは何か考え始める。

すると、同僚の前任校がその女子生徒が通う学校だったことが判明し、二人は仕事終わりに飲みながら事件について話すことに。

ここからは母親の手記と娘の回想で話が進んでいく。

母・ルミ子の過去

母親の名前はルミ子。二十四歳の時、通っていた絵画教室で知り合った田所という男と結婚した。

暗いイメージの田所の絵をこの世で一番大切な母親が絶賛したことで、彼女は田所に興味を持つ。

ルミ子はその絵を譲ってもらおうと母親の感想を少しアレンジして伝えたところ、二人はデートに行くことに。

そして、三度目のデートでプロポーズされると、ルミ子は一度自分の母親に会ってほしいと返事を保留。

田所がルミ子に「陽の当たるような美しい家を築きたい」と語ったことで結婚を決意する。

半年後、ルミ子は無事に娘を出産。娘は清佳(さやか)と名付けられる。

ルミ子は母親からもらった愛をそのまま清佳へと与え、その甲斐あって清佳は他人を思いやることのできる子どもに成長する。

褒めてくれる母親との濃密な時間に喜ぶルミ子。

しかし、そんな幸せな生活にある悲劇が襲い掛かる。

幸せな生活の崩壊

清佳があと少しで小学校に入学するという頃。

田所が夜勤で不在だったため、ルミ子は母親に来てもらうことに。

その日は台風で停電が発生。

ルミ子たちはろうそくの灯りをともして就寝するが、大きな物音がして目を覚ます。

声を頼りに二人の元に行くと、部屋の中にはタンスに押しつぶされた母親と清佳の姿があった。

ルミ子は助けようとするが、そこで異変に気づく。

なんと、ろうそくの火が原因で居間が燃えていたのだ。

母親を助けようとするルミ子。

しかし、母親は清佳を助けるよう懇願し、ルミ子は拒否する。

なぜならルミ子は母親である前に娘であるという気持ちが強く、母親の方が大事だったからだ。

ルミ子の愛情とは母親に褒めてもらうためのものであり、娘の清佳に向けられていなかったのだ。

その後、ルミ子は清佳と脱出するのだが、家は全焼。

幸せな日々は火事とともに終わってしまった。

ルミ子の絶望

火事の後、ルミ子たちは田所家に移り住み、文句を言われながらひっそりと暮らす。

そんな中ルミ子に妊娠が発覚し、あと一週間ほどで安定期に入るという頃、医者から絶対安静を言い渡される。

そこに田所家の長女・憲子とその息子の英紀が訪ねてくる。

清佳は身重の母を心配して空気を読まない二人に怒鳴るが、ルミ子はその汚い言葉に絶望し、英紀と散歩に行ってしまう。

しかし道中、清佳からルミ子が妊娠していることを聞いた英紀は気が高ぶってルミ子を突き飛ばしてしまう。

それがきっかけでルミ子は流産。

「桜」と名前まで決めていた子供を失い、心が空っぽになってしまう。

清佳の思い

桜を失ったルミ子はその後、手芸教室である女性と仲良くなる。

占いができるというその女性の姉から高価な薬を購入し、清佳に飲ませるようになるが、彼女はもっと普通の母親からの愛情を求めていた。

母親に認めてもらいたい清佳は、必死で母の気持ちに応えようと努力する。

ところが、さらなる悲劇が母娘を襲う。

父親の秘密

高校生になった清佳は父の日記を見つけ、父親がどんな人生を送ってきたのかを知る。

そんなある日、彼氏である中谷亨と一緒にいる時に哲史の姿を見つけ、清佳は後を追う。

その先は元々祖母が住んでおり、今は仁美に貸している家だった。

哲史と仁美は学生時代、学生運動を共にした知人だったのだ。

二人の声から哲史が不倫していることは明白で、清佳はたまらず中に入り、二人を怒鳴りつける。

しかし、仁美から思わぬ反撃を食らう清佳。

哲史が仁美と会っている理由、それは清佳とルミ子を見てられないからだというのだ。

あの夜の真実

そして、話はなぜか祖母が死んだあの日のことになる。

実は祖母は焼死したのではなく、ルミ子に清佳を選択させるため、舌を噛み切って自殺したのだ。

愛する母親が娘である自分ではなく、孫の清佳を選んだことがルミ子は許せなかったのではないかと仁美は憶測を並べる。

しかし、その途中で清佳は家から飛び出す。

そして帰宅後、ルミ子にこのことを伝えると、清佳はルミ子に首を絞められる。

しかし、それではルミ子に罪を背負わせてしまうと思った清佳は母親を突き飛ばし、自ら首を吊って命を断とうとするのだった。

母性とは

冒頭の事件では飛び降り、清佳は首吊りと内容が異なっており、ここでようやく母の手記と娘の回想が冒頭の事件と関係ないことが判明する。

ではなぜ女性教師はこの事件に注目したのか。

それはこの女性教師こそ清佳だからだ。

彼女は亨と結婚し、子供を身籠っていた。

また、清佳の首吊り後、仁美と哲史は一緒に逃げ出した。

その後、仁美から別れを告げられた哲史は戻ってきて、ルミ子はそれを許すのだった。

これらの事件を通して、清佳は自分が母に望んでいたことを生まれてくる子供にしてあげたいと考えていた。

清佳は考える。愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが母性なのだと。

ライターのコメント

この物語のほとんどは母親の手記と娘の回想で構成されており、読者はこの二人の心情から事件について考えていく。

娘の母への想い、母となった自分の想い。

かつて娘であった女性がやがて母となるその過程における心情をうまく表現している。

自分もいつか母になったとき、本当の「母性」についてわかるのだろうか。

そんなことを考えさせられた一冊だ。

また、冒頭で女性教師達が向かう『りっちゃん』というたこ焼きが売りの飲み屋。

話を読み進めていくとその居酒屋の店主の正体がわかるはずだ。

そんな小さな伏線にも注目して欲しい。

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