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【伊藤博文邸の怪事件】

読むのに必要な時間 約 5 分

目次

インフォメーション

題名伊藤博文邸の怪事件
著者岡田秀文
出版社光文社文庫
出版日2015年6月11日
価格704円(税込)

登場人物

・わたし
 作者。明治の元勲の事績調べを兼ねて小説を書く

・杉山潤之助
 伊藤家書生。九州博多生まれ。英語を1年学んでいる

・月輪龍太郎
 伊藤家書生。潤之助と同部屋。仏蘭西語を学んでいる。当初は月輪に成りすました村上柿右衛門

・村上柿右衛門
 月輪に成りすまし、伊藤公の暗殺を目論む

・伊藤博文
 時の総裁になる。憲法発布の貢献者

・伊藤生子
 伊藤家の令嬢。生子に成りすました小奴(のちの川上貞奴)

・津田うめ
 生子の家庭教師。伊藤家蔵書の管理役

・大河内泰三
 伊藤邸の家宰を司る。40歳半ば

・留蔵
 小使い

・岩村新平
 伊藤家先輩書生。大柄で堅物。30歳代半ば。長州出身

・吹石健四郎
 伊藤家先輩書生。人当たりが良い好人物。20歳代後半

・桜井 喬
 伊藤家先輩書生。けんか腰の物言い。着物袴姿。越後士族出身

・浅沼寛吾
 警視庁警部

・上坂恭介
 帝東報日新聞記者

・斎藤家宰
 真の伊藤家の家宰

・川崎猶十郎
 新聞記者

・藍沢寅之助
 民権運動に関与。貧乏御家人の三男坊

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

作家の「わたし」は、行きなれた古書店の店主から、旧家で見つかったという書物のコピーをもらった。

杉山潤之助の「奇異なる事件に遭遇した覚書」を見つけた「わたし」は、旧家主人に小説にする了解を得る。

桜井の死

杉山潤之助は、伊藤家の書生となった。

蔵書移動を命ぜられた日、先輩書生の桜井喬が殺された。

潤之助は同部屋書生の月輪龍太郎と共に下手人捜しを始める。

家宰の大河内泰三から、桜井は太政官出仕が決まり、事件当日に発表予定だったことを潤之助は聞かされた。

深夜、伊藤公の寝室から声がした。

寝室ドアごしで声をかけると、黒い影が月輪を突き倒し逃走した。

潤之助は逃げた黒い影が生子だと気づく。

部屋には伊藤公がいた。

潤之助は、伊藤公と生子の妙な関係を疑う。

留蔵の死

伊藤邸の巡査と揉める新聞記者上坂恭介の姿が伊藤公の目に留まり、上坂は邸の奥へ通され、晩餐を共にする。

晩餐後、洋行や憲法の話をする伊藤公に、「お嬢さまがお越しいただきたいと……」と連絡が入り座談は中断した。

邸の留蔵が急に、潤之助に帳面一冊が見当たらないと伝えた。

実は、留蔵は事件当日、裏庭を横切る不審者を目撃していた。

大河内の指示で留蔵を呼びに行った潤之助は、長屋の天井梁で首を吊った留蔵を発見した。

留蔵の首に繩痕が2つ。

邸内の者かと警部浅沼は疑った。

月輪は桜井殺害に留蔵下手人説を挙げた。

留蔵が屋根裏でみたであろう人影や庭園の足あとに想像を巡らせる潤之助は、警護人の話から先輩書生の岩村を疑った。

鹿鳴館で慈善会の準備の手伝いをする潤之助は、上坂から「岩村さんも来ている」と聞かされ、不審に思った。

「岩村は法律学校にも通う苦労人」と吹石から聞いていた潤之助は岩村を尾行するが、法律学校には行かず、茶屋で労務者風の男と接触していた。

潤之助は、男が藍沢寅之助と名乗る民権運動家だと知る。

藍沢は、岩村から『川崎猶十郎で記者』と聞いていた。

潤之助は確認に新聞社に向かうが追い返され、翌日の訪問で岩村ではない川崎猶十郎の実在を知った。

一方、藍沢には警察の手が及び、すでに行方をくらましていた。

なりすまし

潤之助は、自信をもって岩村下手人説を披露したが、それを聞いた大河内は呆れて潤之助に真実を話した。

岩村と桜井や吹石は警視庁の巡査、大河内は警部で伊藤邸警護のために書生や家宰のなりすましだった。

令嬢生子は、伊藤公が水揚げした芸者の小奴だと明かした。

自説崩壊に落ち込んだ潤之助だが、外部犯行説の浅沼に納戸の抜け穴を外部が知るわけはないと、一貫して内部犯行説を譲らなかった。

大河内たちは邸を離れ、津田うめと小奴は実家に帰った。

だが、吹石が失踪し、『憲法覚書』が紛失する新たな問題が起きた。

潤之助は、上坂から聞いた記憶を失した男のことが気になり、翌日現地へ赴いたが、男は記憶を取り戻し逃走していた。

真相

月輪が「今晩、邸に現れる者、誰からも目を離すな」と言い放ったその晩、居間で伊藤公と上坂の座談が行われた。

上坂が憲法に関する矛盾点を突くと、伊藤公の回答は曖昧なものだった。

斎藤家宰が話を切り、座談は幕引きとなった。

夜半すぎ、潤之助と月輪は邸内に足音を感じた。

「御前様が危ない」と月輪は伊藤公の寝室に向かった。

扉を開け俄かに胸元から匕首を取り出した月輪だったが、そこに伊藤公はいなかった。

すると「月輪君、いや村上柿右衛門。観念したまえ!」と大河内の声が響いた。

潤之助と上坂は記憶を戻した男を発見し、男から真相解明の糸口を得た。

この男こそ、本物の月輪龍太郎だった。

上京途中、宿で村上柿右衛門と意気投合した月輪は、多摩川の川岸で村上に脳天を一撃され、川に投げ捨てられた。

幸い、寺に一命を救われたが、荷物はすべて奪われていたという。

この件を潤之助が大河内に知らせた結果、今夜の贋月輪の捕り物となった。

月輪になりすました村上は小部屋に押し込められ、全ての経緯を説明する。

伊藤公暗殺が本分であり、桜井殺害から留蔵殺害に至る供述に、大河内は「無関係の殺人を重ね、志こそが方便。殺人狂の屁理屈――」と言い捨てた。

伊藤公暗殺を実行しなかったのは、伊藤公が本物か疑ったからだった。

供述が終わったとき、村上は丸薬を嚙み砕き服毒自殺を図り命を絶った。

手記の後半、新たな杉山潤之助と本当の月輪龍太郎との交流が記されている。

語学学校に通う中、潤之助と月輪は半年後に伊藤邸を去り、その後は……。

ライターのコメント

舞台が明治創成期の為か、聞き覚えのある歴史上の人物が登場に、まるで事実かのような演出はおもしろい。

果たして本当であるかのような活躍ぶりもさることながら、生子の『なりすまし』が有名な川上貞奴という設定には笑ってしまう。

先輩書生や大河内まで警察官という、『なりすまし』の多用に驚かされた。

自身を証明するものが少ない時代、簡単に個人写真も手に入らないのだから、贋者横行も大ありだ。

最後に月輪龍太郎までも村上柿右衛門がなりすましていたとは、大どんでん返しにマイッタ‼

自死した月輪、いや村上もなかなかのキャラで嫌いではなかった……と惜しくも悲しい余韻が残った。

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