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【流浪の月】

読むのに必要な時間 約 7 分

目次

インフォメーション

題名流浪の月
著者凪良 ゆう(なぎら ゆう)
出版社東京創元社
出版日2022年2月25日
価格定価:814円(税込)

登場人物

家内 更紗(かない さらさ)
 主人公。「家内更紗ちゃん誘拐事件」の被害者として扱われる人生に疑問を感じる。

佐伯 文(さえき ふみ)
 更紗を誘拐した犯人として世間では異常者と見なされ、現在はカフェのオーナーとしてひっそりと暮らしている。

中瀬 亮(なかせ りょう)
 更紗の彼氏。束縛が激しく、暴力を振るう癖がある。

谷さん
 文の彼女。物言いがきつく、更紗に対して文につきまとわないように警告する。

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

①物語の始まり

出会い

家内更紗(かないさらさ)はマイペースな母と家族を愛してやまない優しい父親の元に生まれ、のびのびと暮らしていた。

しかし、父が病気で亡くなると、母は愛人と蒸発。

更紗は叔母に引き取られ、「普通の子」として退屈な生活を送る。

そんなとき、学校帰りに立ち寄る公園にいつも若い男性がいて、ベンチに座って小学生の女の子たちを見つめているのを発見する。

みんなは男性を「ロリコン」だと言い、気をつけるように言うが、家に帰りたくない更紗はある日、その男性の家についていくことにする。

文との生活

男性の名前は佐伯文(さえきふみ)、19歳の大学生。

いわゆる教育ママに育てられた文の生活は、教科書のような規則正しい生活で、更紗は驚く。

しかし、文は叔母の家では到底できないであろう「夕食にアイスクリームを食べる」「布団に寝転んで宅配ピザを食べる」などの更紗の要求に応えてくれた。

1週間もすると更紗が行方不明になっているニュースが連日報道されるようになった。

文は「いつでも帰っていい」と言ってくれたが、やっと手に入れた以前のような日々を捨てる気になれず、更紗は文の部屋に居続ける。

ある日、「パンダが見たい」と言った更紗は文と動物園に行く。

しかし、「家内更紗ちゃん!」と誰かが叫んだとたん、文と更紗は引き離され、文は少女誘拐事件の容疑者として逮捕される。

更紗の憂鬱

更紗がいくら「文は何もしていない」と訴えても、誰も本当の気持ちを理解してくれない。

絶望した更紗は叔母の家に戻る。

しかし、何かしてくるのは文ではなく、叔母の息子の孝弘だった。

夜になると更紗の部屋に入り、体を触っていたのは孝弘。

この家にいるくらいなら牢屋の方がマシ、そう思った更紗は叔父の酒瓶を孝弘の頭めがけて叩きつけた。

②物語の目的

大人になった更紗

孝弘のことをきっかけに更紗は児童養護施設に預けられ、あれから15年が経った。

24才になった更紗は交際している亮と同棲していた。

結婚の話も出ていたが、更紗は亮とずっと一緒にいたいのかわからない。

亮はもちろん「家内更紗ちゃん誘拐事件」のことは知っていて、更紗のことをかわいそうだと思っているのも更紗にとっては引っかかっていた。

文との再会

更紗はあるとき、『calico』という名前のカフェを訪れる。

その店のマスターを一目見た瞬間、更紗は固まった。

マスターは文だった。

それ以来、更紗は残業だと嘘をついて、仕事帰りに『calico』に通うようになる。

いつものように店を訪れると、そこに亮が現れたのだが、最近の亮はバイト先に更紗のシフトを尋ねたり、頻繁に連絡をしてくるようになっていたりと束縛が激しくなっていた。

バーが閉店した後、文を待っていると文が女性と一緒に出てくる。

更紗は思わず声をかけるが、文は当たり障りのない返事をしただけで、更紗のことを覚えているかどうかはわからなかった。

亮との関係

翌日、最近様子がおかしいと亮に言われ、押し問答をしていると、亮の携帯電話に祖母が倒れたと連絡が入る。

亮に懇願されて、更紗は亮と一緒に亮の実家に行く。

すると、更紗の腕にあるアザを見て、亮のいとこの泉が「亮にはDV癖がある」と言った。

さらに亮の昔の話をいくつか聞き、亮の心にも誰にも言えない傷があることを知った更紗は亮と一緒に生きていこうと決意し、『calico』には行くのをやめる。

③目的達成までの物語の場面

豹変した亮

亮と一緒にいる覚悟を決めたものの、心の中にはずっと文がいる。

今でもインターネット上では容赦なく個人情報がさらされ、世間では犯罪者とかわいそうな女の子という認識であることに更紗は苦しい思いを抱えていた。

いつものようにインターネットで文のことを検索していると、「家内更紗ちゃん誘拐」の情報が更新されていて、『calico』の外観と文の写真が載せられていた。

犯人は亮だった。

更紗がそのことについて言及すると、亮は更紗に激しい暴力をふるう。

着の身着のまま更紗が向かった先は『calico』だった。

店の前にたたずんでいると、店に入れてくれる文。

文はちゃんと更紗のことに気付いていた。

新しい生活

文との久々の再会をきっかけに更紗は亮と別れる決心をする。

内緒で住むところを探して、亮が仕事に行っている間に家を出た更紗。

引っ越した先は、文の隣の部屋だった。

現在の文の彼女・谷さんに見つかると警察に通報されるので、変装して注意を払っていたつもりが、文は更紗が引っ越して来たことにも気づいていた。

以前のような距離感を嬉しく思う更紗。

しかし、亮にすぐ見つかってしまう。

亮は更紗のマンションに現れ、文と一緒に暮らしているのかと声を荒げ、またもや暴力を振るおうとする。

その後、亮が来ることはなかったが、谷さんに文のストーカーの疑いをかけられて警察に連れていかれたり、同僚の安西さんの娘の梨花ちゃんを預かったりと色々なことがあった更紗。

不穏な空気

ある日、更紗は店長に呼ばれる。

すると、本社の人が来ていて、1冊の週刊誌を手渡された。

そこには『いまだ終わらない家内更紗ちゃん誘拐事件』と題され、現在の文と更紗の様子が写真入りで書かれていた。

翌週には明らかに亮がしゃべったであろう記事が掲載され、更紗は会社を辞めて亮に会いに行く。

亮に会いに行った更紗はよりを戻したい亮とトラブルになり、亮は階段から落ちてしまう。

更紗は慌てて救急車を呼ぶが、意識を取り戻した亮に「この人に突き落とされました」と指をさされる。

更紗の事情聴取が始まると、文も梨花ちゃんも警察に連れてこられ、少女誘拐事件の犯人になぜ梨花ちゃんの面倒を見させたのかと警察にしつこく責められる。

文はそんな人じゃないと何度言っても「あなたが悪いんじゃない。あなたは被害者だ。」と言われ、またもや話を聞いてもらえない。

そこで更紗はやっと「私にわいせつ行為をしていたのは文ではなく、伯母の家の息子で、文はあの家からわたしを救い出してくれたたったひとりの人でした。」と伝える。

④物語の締めくくり

文の真実

生気をなくした文を連れてマンションに帰ると、エントランスに谷さんがいた。

事実を知った彼女は、文のことが受け入れられないと言って去っていく。

そんな文に対して「文とずっと一緒にいたいから、文がいくところに、わたしもついていく」と更紗が言うと、文は自分について話し始めた。

文の体は大人に成長しない病気だった。

大人になるにつれて訪れるはずの体の変化が、文には訪れなかったのだ。

不安だったが、母親が自分の子どもが普通ではないことを受け入れられるはずがないと思い、文は自分の体の異常を打ち明けることができなかった。

それからの文は成熟した女性が怖いと思うようになり、自分は小さな女の子が好きなのだと思い込もうとするも、うまくはいかない。

そこで出会ったのが更紗だった。

更紗は自由で、更紗のすることは文にとっては驚きの連続だった。

文の思い

警察に逮捕され、身体検査で予想通りの病名が告げられると、文は医療少年院に送られた。

治療を受けることはできても、成人近くの文の体はほぼ手遅れで、体にはほとんど変化が現れない。

医療少年院を出た後は、自宅の離れで半ば監禁状態で生活をしていたものの、母親が倒れると、文はいくらかの財産を生前贈与され家を追い出されることになった。

インターネットで更紗の情報を見つけた文は、更紗と同じ土地に住むことを決意し『更紗』という意味の『calico』というカフェを開いたのだった。

二人のその後

この地のどこかに更紗がいると思えるだけで満足だと語る文の話を聞いて、更紗にははっきりとわかったことがあった。

それは、更紗は文に恋をしていないということ。

キスも抱き合うことも望まない。

けれど誰よりも文と一緒にいたいと願うのだった。

更紗と文の関係を表す言葉は何もなく、関係性にはたくさんの問題がある。

それでも、更紗は文と一緒にいることを選び、文さえいれば、もう何も怖いものはないと思うのだった。

それから文と更紗は、2人で日本の各地を転々とし、過去がバレてしまえば何の躊躇もなく住むところを変えた。

今は2人で長崎でカフェを開いている。

「今の場所にいられなくなったら今度はどこに行きたい?」と、更紗はいつも明るく文に聞く。

決まって文は「どこにでもついていくよ」と答えるのだった。

ライターのコメント

この本で好きだったシーンは、更紗が『calico』と同じ建物内にある雑貨屋でオールドバカラのグラスを見つけ、店主に父が愛用していたものだと言うと、帰り際に店主にグラスを渡してくれるというシーン。

手になじむと言って嗜んでいた父と同じ物を大切にする更紗が印象的だった。

本作は映画にもなっていて、映画では更紗役を広瀬すずさん、文役を松坂桃李さんが演じているのだが、二人の演技力に引き込まれた。

特に松坂さん演じる文の「生気のなさ」は原作そのもので驚いた。ぜひ、映画も観ていただきたい。

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