【三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側】

インフォメーション
| 題名 | 三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側 |
| 著者 | 三枝 玄太郎 |
| 出版社 | 東洋経済新報社 |
| 出版日 | 2024年4月 |
| 価格 | 1,650円(税込) |
世の中は毎日、たくさんのニュースであふれています。経済、政治、国際……分野はいろいろありますが、最も身近なのが事件や事故に関連するニュースではないでしょうか。
では、「警察は認否を明らかにしていません」とは、どういう意味でしょうか?
「大規模な捜索」って何人体制のことでしょうか?
「命に別条ありません」というとき、被害者に意識はあるのでしょうか?
告訴と告発の違いは? 起訴と不起訴の差とは? ――すべてに即答できる人はそういないはずです。
本書は、こうした「ニュースの言葉」のポイントとその背景を、元新聞記者がわかりやすく説明します。
これ1冊読めば、ニュースがおもしろくてたまらなくなる!
引用:東洋経済STORE
ポイント
- 逮捕状を犯人に示して逮捕する形態のものを「通常逮捕」、目の前で犯行を目撃して犯人を捕まえたときは逮捕状なしの「現行犯逮捕」という。逮捕には様々な種類が存在する。
- 「容疑をほのめかす供述」とは、供述した内容が容疑者にとって都合が悪い場合、供述調書の証拠価値をなくすためにサインを拒否したときに用いられる。
- 「命に別状はない」と「意識あり」に明確な使い分けの定義はないものの「意識あり」のほうが深刻な状況であることが多い。
サマリー
はじめに
普段ニュースを見ていると、事件の背景や人々の感情まで理解したような気になることがある。
しかし、その情報がどのようにして作られ、どんな意図で世に出ているのかを意識する人は少ない。
また「現行犯逮捕」や「容疑をほのめかす供述」といった言葉の正確な意味を理解している人も、おそらく多くはないであろう。
本書『事件報道の裏側』は、産経新聞社の記者として長年活躍された三枝玄太郎氏が、ニュースで報じられる用語の解説を始め、報道現場や事件現場での出来事を描いた一冊である。
逮捕とはそもそも何なのか?
ニュース報道でよく耳にする「逮捕」という言葉は、実はいくつもの種類が存在する。
この書籍で解説されている逮捕の種類と、その意味について解説しよう。
通常逮捕
まず、メディアで一番報道される逮捕が「通常逮捕」というものである。
これは、犯罪を明示する書類、すなわち逮捕状を犯人に示して逮捕する形態のものを指す。
この逮捕状は氏名、住所、殺人罪などといった罪名、被疑事実の要旨などが記載された書類で裁判所が発布する。
警察は原則として逮捕状なしに逮捕できないが、この逮捕状は実は簡単には発布されない。
警察がいくら犯人であると確信を持っていたとしても、証拠が乏しい場合には裁判所ではねつけられることもあるのだ。
現行犯逮捕
こちらの言葉も、ニュースや新聞などでしばしば目にするものだ。
例えば、あなたがコンビニエンスストアで買い物中、万引きをしている男を目撃したとする。
周りに警察署もなく、警察を呼んでいる暇もない。
そのようなとき、その男に自分が声をかけ犯人を捕まえた場合、これは「現行犯逮捕」となる。
さきほどの通常逮捕と異なる点は「逮捕状」が不要であるということだ。
目の前で犯行を目撃し、犯人を捕まえたときは逮捕状なしで「現行犯逮捕」することができる。
なお、著者によると、この現行犯逮捕は憲法では例外的な取扱いなのだそうだ。
しかしながら、1981年の犯罪白書によれば全国で発生した金融機関強盗で検挙された人のうち、現行犯逮捕で捕まっている人は全体の6割に相当するとのこと。
例外的であるにもかかわらず、実際の現場では逮捕状なしで逮捕される人の方が多いという実態がある。
常人逮捕
さきほどの現行犯逮捕の例では、警察官ではない一般人であるあなたが万引き犯を目撃し、捕まえている。
このように、警察ではなく一般の人によって逮捕することを「常人逮捕」という。
緊急逮捕
緊急逮捕も逮捕状が必要ない形態の1つである。
著者は、火災現場における放火犯の例を挙げている。
民家が全焼し、現場に警察官が駆けつけたところ、目撃者の一人から「出火前に赤い髪をした中学生の女の子が家から走り去って行き、その直後に火の手が上がった」との証言が得られた。
数時間後、近くの繁華街でライターを持った赤い髪の女の子が「民家に火をつけた」と話したので逮捕したという事例である。
この場合、逮捕状はないものの、この赤い髪の女の子が犯人であるということを警察官が判断することによって、例外的に逮捕することができる。
これを緊急逮捕という。
別件逮捕
さきほど、裁判所は証拠が乏しいと逮捕状を発布しないと紹介した。
しかし、重大な殺人事件などで捜査に時間がかかってしまうと、犯人を逃してしまいかねない。
そこで、会社の備品を持ち帰ったりとか、同僚の自転車で勝手に帰宅したとか、その犯人の犯した他の些細な犯罪で一旦検挙する。
そして、その勾留中に殺人事件の捜査を進めるというのが、この別件逮捕である。
この手法は主に昭和の頃に行われていたが、いざ裁判となると物的証拠がやはり不十分であったり、別の真犯人が後から見つかるといったケースもあった。
そのため、現在では起訴するに足りる別件でない限り、裁判所は勾留を許可しない。
ただし、別件逮捕がなくなったわけではなく、現在においても外国人犯罪においては例外的に行われている。
それは、警察が殺人事件の証拠を固めている間に出国されてしまうと、国によってはその後の逮捕が不可能になってしまうからである。
この場合、裁判所も勾留を認めてくれることがある。
逮捕という言葉だけでも、じつに様々な種類があることがおわかりいただけるだろう。
普段メディアに接していると、これらの言葉が出てきても「警察に捕まった」という認識くらいで聞き流してしまいがちだ。
しかし、実は同じ「逮捕」であっても意味はまったく違ってくるのである。
「容疑をほのめかす供述」とは?
「容疑を認めている」や「容疑を否認している」という言い回しの他に「容疑をほのめかす供述」というものが、しばしばニュースで流れることがある。
認めているわけでも否認しているわけでもない、実に曖昧な表現方法である。
この表現方法は「供述調書」が大きく関係している。
供述調書とはその名の通り、逮捕後に容疑者の供述を記録しておくもので、裁判所の公判廷に提出される非常に重要なものだ。
供述調書は、自白が本人の意志に基づいてなされたかという「任意性」と、供述が事実かどうかという「信用性」の2つが揃っていなければ証拠価値がない。
そして、任意性を持たせるには供述調書に容疑者のサインが必要である。
ところが、供述したことが容疑者にとって都合が悪い場合、そのサインを拒否することがある。
すると、供述調書に任意性を持たせることができなくなる。
この場合、容疑者は口頭で犯行を認めているものの、供述調書は証拠価値がないため、結果として容疑を認めたことにはならない。
これが「容疑をほのめかす供述をしている」の典型例である。
